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メディアグランプリ

ライバルが100人以上に増えた今、私がずっと1番にこだわる理由〜天狼院メディアグランプリ〔TENRO-IN GRAND PRIX〕8thシーズン最終結果発表!(2016.4.18〜2016.6.12)〜


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ブオン!!

ものすごい、煙の匂いだ。
ミラーを横目で見る。私を追いかけてくる、後ろのやつらが、エンジンをふかしている。レースの地面が汗をかいたように光り、水蒸気がもくもくと上がる。
あいつら、本気だ、と私は思う。ギラギラした目で、本気で私を負かそうとしている。
「だめだ」と口に出して言う。ヘルメットの下でつぶやいた。自分だけに聞こえるように。
「だめだ、だめだ、負けたくない」口に出すと、なぜか、涙が出てきそうになる。
ものすごい勢いで走っているから、皮膚が切れてしまいそうだと思う。今何キロなんだろう。わからない。でもきっと、もうブレーキをかけられないくらいのスピードは出ているんだろうな、と私は思った。

「負けたくない、負けたくない、負けたくない」

嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ。
負けるのは、絶対に、嫌だ。

「一番は、私がいい」

だって、今までずっと一番を走ってきたのは、私なんだから。

 

 

グランプリが始まった頃、このレースを走っているのは、せいぜい10人くらいのものだった。
私のずっとずっと、はるか先に、伝説のドライバーがいた。
彼の走る車は、もうずっと遠くにいるから、私はただ、エンジンをふかしている車から出る、煙の残り香のようなものを嗅ぐことでしか、彼が前にいるのを確認できなかった。
彼は、私がドライバーとしてレースに出るようになるずっと前から、伝説のドライバーとして活躍していた。
彼の愛車は、エンジンから車体、何から何まで、全部美しかった。すべてが輝いていた。

「彼は、天才だ」と誰かが言っているのを、聞いた。

「彼は、天才なんだ。レースの神が彼に、取り憑いているんだよ。生まれ持った才能さ。センスの問題だよ」

観客の声が、耳に入ってきた。
でも、私はその声に違和感を覚えた。
なぜだろう? わからない。
でも私は、彼が毎回、みんながレースを終えて、打ち上げをしに行っている時でも、一人、倉庫に残って、車体を丁寧に磨いて、完璧に整備を整えようとしているところを、何度か見かけていた。それを「センス」という言葉だけで終えてしまうのは、どこか違うような気がした。

「おお、お前も残ってたのか」

ある夜のことだった。
車の調子が悪いので、私が一人で整備をしていると、そんな声が聞こえた。
彼だった。

「どうしたんだ、こんな遅くに」
「いえ、あの、エンジンの調子が悪くて」

すると彼は黙って私の車に近づいて、何かをいじっていた。

「ほら、直った」
「え? あんなにひどかったのに……」

驚いた。ずっと作業していても原因がわからなかったのに、彼は一瞬にしてその故障を見つけ出してしまったのだ。

「どうやったんですか?」
「簡単さ。ABCユニットっていうのを使うんだ」
「ABC……なんですか?」

そう聞いても、彼はただ笑って答えなかった。

「いい車だな」と彼は言った。

「ありがとうございます」と褒められたのが嬉しくて、私も笑った。

「でも、全然使いこなせてない」

え、と思った。彼の顔は真剣だった。

「どれだけいい車に乗っていても、ドライバーの君がこれじゃ、全然ダメだ。宝の持ち腐れってやつさ」
「そ……そんな」

憧れの彼に、そんなことを言われたら。
私がドライバーとして走ることを決めてからずっと、いつか彼みたいになりたいと思っていたのに。

私が黙っていると、また彼は口を開く。

「簡単だよ、君ができることは一つしかない」

彼の方を見る。厳しいけれど、まっすぐな目をしていた。

「走ることだ」

「え?」

「ただ、走ることだ。ひたすら、前だけ向いて、走るんだ。完璧に整備した車で、完璧なコースで、完璧に走るんだ。走り続けるんだ」

「……」

「僕のことを、天才だと思う?」

「……はい」

「どうして?」

「あなたは、誰よりも早くて、誰よりも美しくて、誰よりも、センスがよくて」

「それは、君たちが決めたことだろう?」

「え?」

意味がわからなかった。

「僕が、天才じゃないと、君たちにとって、ひどく、都合が悪い。違うか?」

息が、止まるような気がした。

「『あいつは天才だから自分たちとは違う』、そうやって言い訳できないと、自分が困るんじゃないのか? 僕が、何もできないところから、努力して、地道に毎日車の整備をして生きているってわかったら、努力しない自分自身の立場がなくなるから、だから、そうやって『あいつは天才だ』って、言うんだろう?」

胃がキュッと縮こまって、痛くなる。その場から、彼から目をそらすことができない。
私はそこから動けなくて、ずっと黙って立っているだけだった。

「簡単だよ」

もう一度、彼は言った。

「走るんだ。そして、レースに出続けるんだ。それだけだ」

 

 

あの日。

彼に言われて、何も言えなくなったあの日から、私はずっと、レースに出続けてきた。
高い彼の壁を乗り越えようと、ずっと追いかけ続けてきた。

徐々に、車も自分の体に馴染んできた。

それでも失敗する日もあった。うまくいかないレースもあった。自分のスタイルってものが、どんなものかわからなくなる日も、多々あった。

毎日毎日、走り続けてきた。

徐々に自分のやり方がわかるようになってきて、やっと、トップを走れるようになってきた頃に、気がついたら、後ろには、百人以上もの人が、私をめがけて、追いかけてきていた。

え、どうして。
はじめは、10人くらいしかいなかったのに。

ふと気がつけば、もう、「メディアグランプリ」は、第8シーズンを終えようとしていた。

そうか、もう8回も。
1戦につき、8回、レースがあるから、もう、64回のレースに、出てきたことになる。

それなら、100人近く来ても当たり前か、と思うと同時に、強烈な恐怖心が、私を襲ってきた。

ぐんぐん成長していて、私よりもずっとすごい車体に乗っている人。
このグランプリは初参戦だけれど、別の場所では、とても有名な人。
そして、伝説の彼に、すごい才能だと、認められている人。

やっと、やっと、ここまでやってきたのに。
やっと、一位を取れるようになってきたのに、あとからあとから、ライバルは現れる。

嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ。

負けたくない。
ずっと前を走っていたい。

私の前を走るのは、あの伝説の彼だけで、あってほしい。

「優勝は、川代さんです!!」

はっと、気がついたときには、私は、大勢の観客に囲まれていた。

私が、一位。

やった。
やったんだ。
一位をとれたんだ。

ああ、よかった。

急いで、彼の姿を探す。
自分のことを報告しなきゃ。私が一位だって、一位をとれるようなドライバーになったんだって、言わなきゃ。

でも、いくら探しても、彼の姿はなかった。

最近、彼は、あまりレースに出ることはなくなった。
けれど、たまに登場しては、さっと一位をかっさらっていく。だから余計に、彼を「伝説のドライバー」と呼ぶ人は増えた。
また新しい場所を、もっと上で戦える場所を、見つけてしまったのかもしれない、と私は思った。

私は目の前を追いかけていた彼のことを思う。そして、私の後ろを走っていた、何百人というドライバーたちのギラギラした視線を感じる。

ああ、まだ私は走らなきゃならない。

「簡単だよ」

彼の声が、耳の奥で響く。

「走るんだ」

走るんだ。
自分自身に、言い聞かせる。

「走るんだ。そして、レースに出続けるんだ。それだけだ」

私は空を仰いで、今日もハンドルを握る。
さあ、もう次のレースが、始まっている。

天狼院メディアグランプリについて、詳しくはこちら↓

天狼院メディアグランプリ〔TENRO-IN GRAND PRIX〕8thシーズン開幕!(2016.4.18〜2016.6.12)

メディアグランプリとは?
お客様、プロ、スタッフ混在の、PV数で競う記事のグランプリです。
一つのシーズンで8週間本気で戦い、順位を競います。

スタッフ川代です!

はい、というわけでメディアグランプリ第8戦が終了いたしました!

それではいよいよ、最終結果発表に参ります。

では、表彰台第3位!

今回は二人います!

最終獲得ポイント数24ポイント!

ライティング・ゼミ生 安達美和さん!
チーム天狼院 野呂美紗貴!

おめでとうございます!!!

ご自分の体験をユーモラスに、けれど感動的に描かれる安達さんの記事。

安達さんのヒット記事はこちら
宇宙で一番可愛い並みの容姿の女の子

多くのファンがつきました! お客様で表彰台に!! すばらしい!!
お客様の部の特典として、総合3位に入られたので、プレミアムカード3枚をプレゼント! おめでとうございます!

そして前回の第8戦でフリー投稿権をゲットした野呂! ファンをつけ、堂々3位に入賞です。

野呂のヒット記事はこちら
旅部なんて参加しなければよかった ≪旅部レポート ~0529江の島~≫

つづいて第2位!!

最終獲得ポイント数34ポイント!!

チーム天狼院 京都天狼院店長に就任が決定している、三宅香帆!!

「妄想京都天狼院」の連載に多くのファンが付いている三宅。今回は「リーディング・ハイ」も多く書き、2位に!

三宅のヒット記事
ねぇねぇ、『ズートピア』のジュディとニックって、どうして恋愛関係にならないの? ≪三宅のはんなり京だより≫

 

そしてはえある第1位は!!

最終獲得ポイント数57ポイント!!

 

チーム天狼院 WEB天狼院編集部 川代紗生!!

 

おめでとうございます〜〜〜〜!!!

ってお前かい!!
自分で自分を祝うこの恥ずかしさをわかってください!笑
とはいえ、いや、嬉しいな〜、一位! 堂々の一位! 文句なしの一位! 久々です。

【父と娘の葛藤記】「絶対に一生許さない」と思っていた、22年間ずっと嫌いだった父親のこと《川代ノート》

というわけで、冒頭の文章は私の思いをレースにのせて、書かせていただきました。

けれど真面目に言ってしまうと、上記の小説まがいのストーリーは、嘘でも作り話でもなく、本当の話です。

メディアグランプリが始まった頃、2014年くらいのことだったでしょうか、参戦しているメンバーは店主の三浦さんとスタッフだけでした。メディアグランプリの認知度も全然高くなかった。

それが、ライティング・ラボが始まり、ライティング・ゼミが始まり、どんどんレースに参加される方の数は増えて、今ではライバルが百人以上。
ゼミも回数を重ねるごとにどんどんレベルが高くなってきて、必死になって書かないと一位を取れなくなってきて、焦って、不安になる日が増えて……。

それでも、やっぱり書かなきゃ、と思うのは、「書け」と、「ただひたすら書くしかないんだ」と、言われたからだと思います。

今、お客様の文章のクオリティもものすごく上がってきて、ライティング・ゼミ平日コースも始まって、おそらく、次の9thシーズンは、お客様の勢力の方が、圧倒的になる。チーム天狼院なんて、全然太刀打ちできないかもしれない。

でも、私はやっぱり、一位をとり続けたい。

順位なんて、と言われるかもしれません。
そんなもので文章の価値を測るなんて、バカじゃないのかと。

でも、AKBの総選挙じゃないですが、やっぱり、一位がいいんです。
チャンピオンがいい。一番の書き手は、自分だっていう証明がほしい。

だから、私は、9thシーズンも本気で挑みます。

戦争になる、予感がする。

ライティング・ゼミ平日コースという新しい巨大勢力が出てきて、母数も一気に増える。
リーディング・ハイも始まっているから、その勢力も参戦して、とんでもないことになります。

だから、おそらくこの夏は、本当に熱い夏になる。

さあ、レースの時間です。

本気でぶつかり合いましょう。

私は絶対に負けたくありません。

ガチンコ勝負の始まりです。

それでは、よろしくお願いします。

 

天狼院メディアグランプリ〔TENRO-IN GRAND PRIX〕9thシーズン開幕!(2016.6.13〜2016.8.7)

【天狼院メディアグランプリの参加資格】

「お客様の部」
「天狼院ライティング・ゼミ」の受講者
「読/書部」のメンバーのお客様

*天狼院ライティング・ゼミについて、詳しくはこちら↓

【通信受講/日本全国対応】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ2.0」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜《この春、大人気ライティング・ゼミが大きく進化します/初回振替講座有/全国通信対応》

【平日コース開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ2.0《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜《6月開講/初回振替講座有/東京・福岡・全国通信対応》

*天狼院「読書部」について、詳しくはこちら↓

本好きの、本好きによる、本好きのための夢の部活「月刊天狼院書店」編集部、通称「読/書部」。ついに誕生!あなたが本屋をまるごと編集!読書会!選書!棚の編集!読書記事掲載!本にまつわる体験のパーフェクトセット!《5月1日創刊&開講/一般の方向けサービス開始》

【チャンピオンシップ最終結果発表】

第1位 川代 57ポイント
第2位 三宅 34ポイント
第3位 安達美和さま 24ポイント
第3位 野呂 24ポイント
第5位 糸数恵那 22ポイント
第6位 岸★正龍さま 20ポイント
第7位 三浦 17ポイント
第8位 酒井 13ポイント
第9位 小島 12ポイント
第10位 庭瀬亜香さま 11ポイント
第11位 山本 8ポイント
第12位 ゆらさま 6ポイント
第13位 山口 7ポイント
第14位 いんこさま 5ポイント
第15位 伊賀 5ポイント
第16位 大石香さま 4ポイント
第16位 ダモイ コジローさま 4ポイント
第18位 おはなさま 3ポイント
第18位 まるバさま 3ポイント
第18位 Sofiaさま 3ポイント
第18位 西部直樹さま3 ポイント
第22位 奄美るかさま 2ポイント
第22位 まるバさま 2ポイント
第22位 PN:39さま 2ポイント
第25位 高野萌美さま 1ポイント
第25位 のんさ~ん!さま 1ポイント

【お客様部門】

第1位 安達美和さま 24ポイント
第2位 岸★正龍さま 20ポイント
第3位 庭瀬亜香さま 11ポイント

【チーム天狼院部門】

第1位 川代 57ポイント
第2位 三宅 34ポイント
第3位 野呂 24ポイント

 

 

 

【天狼院書店へのお問い合わせ】

TEL:03-6914-3618

 

天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F

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FAX:03-6914-3619

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2016-06-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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