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猛獣使いが猛獣と接する際に気をつけていること


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:吉村奈緒子(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
「あの人には困った。でも素直に言うこと聞くタイプじゃないし、どうしたものか……」
 
我が社にはそう上司を悩ませている男性がいる。
定年を控えたおじさんで、プライドが高くて頑固。「こう」と思ったら突き進み、否定されたと本人が捉えるとヒートアップして相手に噛み付いたりもする。
簡素で構わない資料も何十ページもあるような大作を作り、内容も分かりにくいため、その男性の上司であるAさんはいつも頭を抱えている。
 
でも修正はしてもらわないとならない。
そんな時、なぜか私の出番だったりする。私の言うことは割と素直に聞き入れてくれるのだ。
なので「僕じゃあんなに素直に言うことを聞いてくれない。本当にありがとう」と、Aさんにめちゃくちゃ感謝されている。「猛獣使い」との異名ももらった。
 
丸く収まって何よりだし、お役に立てたのは嬉しい。
ただ、私はなにか特別なことをしているわけではない。
 
私が年下の異性、かつ直接の上下関係ではない、というアドバンテージもあるだろう。プロジェクト関連の付き合いだからこそ素直に聞いてくれるということもあるかもしれない。
だが、何人かの猛獣も心強い味方にした実績のある「猛獣使い」たる私が、「猛獣」と接する際に、意識している「当たり前のこと」について語ってみようと思う。
 
おじさんが「資料を作ったので見てほしい」と共有してきたとしよう。
 
それに対してAさんは、めんどくさい年上の男性に対するフィードバックを嫌がっているフシがある。私には気になる部分をぼやくものの、本人へそれをなかなか言おうとしない。
でも、仕事なので伝えにくいことも伝えなければならない。本人も意見を求めているので、遠慮なく言わせてもらおうじゃないか。
 
ただ、言い方は重要だ。
同じことを伝えるのでも、伝え方によっては反発心でせっかくのアドバイスが相手に届かないことがある。
 
そんな時、私がやっていることは下記である。
・明るく、まずは受け止める
・本人の頑張りをねぎらう
・(もしあれば)良い点を伝える
・修正点は、資料の目的や修正理由とセットで、「こうすればもっと良くなると思うが、どうか?」という伝え方をする
 
つまり「明るく、頑張りを認めた上で、前向きなフィードバックを行ない、相手の意見を聞く」だけである。あまりにも普通なので、「なんだ、そんなことか」と思った方もいるのではないだろうか。
ただ、これが意外と意識しないとできなかったりする。どこを修正するか、に頭がいってしまうので、作成者の気持ちや労力をうっかり忘れてしまいがちだ。
 
Aさんも若手相手なら「育成」を意識し、それができるのだと思う。だが、件のおじさんについては、自分よりずっと年上で育成対象ではないこともあり、それができなくなっているのではないだろうか。
 
でも私は思う。
若くても若くなくても、前向きなフィードバックであれば、欲しい人は多いんじゃないかと。少なくともおじさんは資料を共有し、「気になる点がないか」と聞いてきている。自分の作成した資料をより良いものにしたい、という思いがあるに違いない。
そして、「自分の頑張りを認めてもらいたい」という気持ちも、それと同じくらい強いのだろうと。
 
この思いに年齢は関係ない。
むしろ年齢が高くなるほどに、その思いは強くなるんじゃないかと想像している。
 
自分が管理職になってみて、そして年齢が高くなって気づいたことがある。
それは「ポジションも、年齢も、高くなればなるほど、孤独になっていく」ということだ。
 
仲間がいない、ということではない。人間関係が悪いわけでもない。
ただ、ポジションや年齢が上がるごとに、迂闊なことを言えなくなる。また周囲に対する影響力が知らずと強くなり、周囲もあまり意見を言ってくれなくなってくる。自分の意見は通しやすくなるが、孤独に感じることも増えていく。
でもベテランだって管理職だって自分の決定や成果物に対して不安に思うことはある。そんな時に前向きな意見をくれる相手は貴重だ。
 
また、社会人は「成果」を出してナンボだ。若手時代は「頑張っている」だけで褒められることもあるだろうが、それは若い頃だけ。
でも、ベテランだって「頑張っている」。
そしてそれを「分かってもらいたい」という気持ちもきっとみんなあるはずだ。承認欲求は人間、誰にでもある。
 
ズレた資料だったとしても、そのおじさんは一生懸命に取り組んだ。その頑張りを、思いを、否定されたら傷つく。今までも自分自身を守るために牙を向いて上司に噛み付いてきたんだろうなと思う。
 
なので、まずはそこを汲むことにしている。
「私はあなたの味方だよ」というスタンスで、相手を否定せずに伝えれば、私のような年下の意見でも意外とすっと受け入れてくれるものだ。
 
おじさんは「ありがとう。考えてみるよ」と前向きに受け止め、伝えた内容に沿って資料を修正する。そして出来上がった資料を見せ、さらなるフィードバックを求める。その時のおじさんには、猛獣時の猛々しさは感じられない。
 
「猛獣使い」に特別なスキルはない。相手の気持ちを汲み、尊重することを意識すれば、猛獣は牙を剥くことなく素直に従ってくれる。実は猛獣ではなく、ただ怖がってシャーシャー言っている野良猫だったのかもしれない。猛獣化させないようにするのも、猛獣使いの腕の見せ所だ。
 
そして、猛獣使いも猛獣と接する際には、それなりに神経を使っている。私の気持ちもぜひ汲んで、たくさん褒めてもらえるとありがたい。
 
 
 
 
***
 
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