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ふるさとグランプリ

どれだけ苦しくても、大阪人は食べ放題に命をかけて挑む《ふるさとグランプリ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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【東京・福岡・京都・全国通信対応】《日曜コース》

記事:田中 洋輔(ライティング・ゼミ)

「いや、ありえへんで」
「ほんまやで。ちょっと、考えられへんわ」

僕は、友人と前日に見たテレビの感想を話し合っていた。

「この衝撃を誰かに言いたい!」と思い、会って開口一番に切り出した。

「昨日のん、見た?」

相手も同じだったのだろう。
「いや、ちょっとあれは、ないわ」

番組では、大阪と東京の違いという特集が組まれていた。
そこで僕は衝撃を受けることになる。

「果たして、バイキング(食べ放題)の様子に違いはあるのでしょうか?」

芸人さんが言うと、画面はホテルのバイキングの様子に切り替わる。

東京での食べ放題(どうやら、ビュッフェと言うらしい)に来ている人にレポーターがインタビューをおこなう。

オシャレな格好をした女性は、「いやぁ、ビュッフェは楽しむものなので、ほとんど取りには行かないですねぇ」と、優雅に答える。

僕は、その様子を、口をあんぐり開けながら見ていた。

この人は、いったいなにを言っているのだろう……
言っている意味がわからなかった。

テレビでは、その後「こんなことを聞きました」と言い、ある数字を示した。

「だいたい2回〜3回くらい」とナレーションがはいる。

え? ん? え?

信じられなかった。
あり得ない。

宇宙人を見た人の話を聞くと、こういう反応になるのだろうか。僕にはあまりに衝撃で、どういうことなのかさっぱりわからなかった。

東京の人は、ビュッフェを取りに行く回数は、2回から3回くらいらしいのだ。

「なにしに行っとるねんっ」と、右下の小窓(ワイプ)から芸人さんが声を荒げる。

「ほんまやでっ!」
僕はツバを吐くくらいの勢いで、友人に向かって話をしていた。

「なんでどんどん取りにいかへんねやろ?」
「恥ずかしいんかなぁ?」

「でもな、『私たちは、食事を楽しんでいるんです』とか言ってたから、そもそも、俺らみたいな考え方と違うんとちゃう?」

「ああ、そうかも知れへんなぁ」

東京の人たちの次は、我らが地元の大阪。
梅田のホテルでバイキングを楽しんでいる人たちが映る。

彼らが話す様子は、いつも見ている風景だったので、「そうそう。これこれ」と、久しぶりに実家へ帰り、母親の手作り料理を食べたときのような気持ちになる。

「いっぱい食べられるように、いつもより大きめの服を着てきました」
「来る前に1時間くらい運動してきたんです」
「朝食を抜いて、万全の状態できています」

東京と大阪では、バイキングへ向かう姿勢が全然違う。

大阪の梅田で食事を楽しんでいた小学生の母親は、「ちゃんと元をとらなあかんで!」と、テレビに映っているにも関わらず、子どもに言っていた。

食べ放題へ行くと、大阪のおかんは絶対に言う。

「あんた! 元をとらなあかんで!」と。

「できるだけ高いものをいっぱい食べるんや!」
「ここで昼ご飯をめちゃめちゃ食べたら、夜ご飯は無しや!」

大阪人は、食べ放題をまるで戦(いくさ)のように思っている。

臨戦態勢で望む。覚悟を持ち、周到な準備の元で戦地へおもむく。

お腹がいっぱいになってきたところで、おかんが言う。

「あかん。タッパ持ってきたらよかったわ」

僕は、この番組を見たときに、大阪人の異質さに気がついた。
どうやら、自分たちが「当然や」と思っていたことは、どうも世間一般的には違うらしい。

東京の人たちは、朝食を抜いてバイキングには来ないし、「元を取れ!」と言って、「お腹がいっぱい」と言う子どもを怒ることもない。

大阪人は、「元をとる!」ことをなによりも重視する。
食べ放題だけでなく、旅先やいろんなところで、親に言われる。

「元をとるんやで!」と。

気がつかないうちに、僕たちは洗脳されている。

なにごとも「元をとることが大事だ」と。

あなたも聞いたことがあるだろう。
大阪人は、安い買い物をしたときに自慢をする。

「これ、いくらやと思う? めっちゃ安かってん」
すごいでしょと、言わんばかりのドヤ顔で言ってくる。

これは、大幅に元をとっているから、自慢をするのだ。
「めっちゃ元とったでー」と、みんなに言いたいのだ。

大阪人は、元をとらないといけないと信じている。
サンタクロースを信じる子どものように。

「元を取る」ということは、言い換えると、「損をしたくない」ということだ。

僕たち大阪人は、損をしたくないのだ。
なによりも。

損をしたくないから、食べ放題では、お腹がいっぱいで食べられないと思っても、「ステーキが焼き上がりました」と聞けば、お皿を持ってとんでいく。
パブロフの犬みたいに条件反射で動く。

これはまるでギャンブラーみたいだ。

ギャンブルにハマる人は、うまくいかないと、損を取り返そうとして、どんどんのめり込んでいく。損をしたくないなら、ギャンブルなんてやめればいいのに、それができない。なんとかして得をしたいと思っている。

先日、僕は自分の行動に思わず「あほかもしれへん」と思ったことがあった。

友人数名と焼き肉食べ放題へ行くことになり、みんなで予定を調整した。

数日前になり、僕はいろいろネットで調べた。
店を調べていたのではない。
どうすれば、お腹が膨れず、元をとるくらいに焼き肉が食べられるかを調べたのだ。

いくつかのページを見て周り、その情報をスマホのメモ帳にまとめて、焼き肉屋へ向かった。

席につき、注文をおこなう。
おもむろにスマホを取り出し、メモ帳をみる。

「炭酸はダメだ。お腹がふくれる。お酒も危険だ。肉に集中できない」

一人でぶつぶつと言いながら、頼むものを決めていく。

ライスなど言語道断だ。
炭水化物は、お腹がふくれる。

そうやって、僕はただ、お腹がいっぱいならないように、なんとかして元を取ることだけを考えて食事をした。

店を出たとき、無力感が襲ってきた。

「俺は、一体なにをしているんだろう……」

ハッキリ言って、全然楽しくなかった。

機械のように、肉を胃袋に入れていく。ベルトコンベアから流れてくるものを1つ1つ取るように、肉を箸でつかんで口へ入れる。ただの単純作業。

食べたいものを食べるのではなく、お腹がいっぱいにならないものを食べる。元をとるためだけに食べる。

誰にも頼まれていないのに、僕は勝手にフードファイターになっていた。それは、ただの苦行だ。

「もう二度と焼き肉食べ放題なんて来たくない」と思うほど、食事会はつまらなかった。

僕は、まさにギャンブラーと同じ罠にはまっていた。

ギャンブルをしている人に、みんなはこう言う。
「どうせ損をするだけやねんから、やめとき」と。

外から見ている人には、わかる。
ギャンブルが損をするだけだということに。

しかし,当事者はそう思わない。
「絶対、当てたる! 一攫千金やぁ!」

どうあがいたって得することはない。当たったとしても、そこに至るまでにどれだけの損を積み上げたのだろうか。

ギャンブルも食べ放題も、決して得をすることはない。

「元を取ろう!」と意気込むのではなく、ただ単純に楽しむことが大切なのだ。気合いを入れすぎると、後で大きな後悔をすることになってしまうのだから。

でも……

わかっている。
頭でわかっては、いる。

でも、やっぱり僕は元を取りたい。

どれだけ、焼き肉が楽しくなかったとしても、ご飯を我慢したとしても、「損したなぁ」と思うことに比べれば何倍もマシなのだ。

きっと他人から見たら理解できないだろう。
損するだけなのに、嬉々として楽しむギャンブラーと同じだ。

僕たち大阪人は、そんな人種なんだ。

あほやなと思うことも、「あっ、ええネタできたわ」と、前向きに捉えることができる。
ギャンブラーが「なにかある度に、これは吉兆や」と、言うみたいに。

おもしろければ、それでいい。

元は、充分に、とれている。

***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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