READING LIFE

父は雑誌『READING LIFE』を家族に見せるべきなのかどうか、迷うのである。「人生を変える」雑誌『READING LIFE』予約受付開始〜《2017年6月17日(土)発売/東京・福岡・京都店舗予約・通販申し込みページ》


記事:西部直樹

池袋天狼院書店のこたつ席、堕落のクッションにもたれながら、わたしは煩悶していた。
もしくは、懊悩に身悶えしていた。
困窮と言い換えてもいい。
ともかく、どうしたものかと思い悩んでいた。
目の前には、美しい薄暮の風景写真があった。
それは、これからでる雑誌『READING LIFE』の扉の写真だ。
美しい、じっと見つめ続けられる写真だ。
小さな紙に刷られた風景は、見ている間に広がり、吸い込まれる。

その美しい写真に、悩む要素はない。
ないのだけれど、これが悩みの種なのである。
この写真の次にあるものに、わたしはどうしたらいいのか、悩むのである。
わたしは一人の父親として、悩ましく思うのである。

わたしは最近、父親の威厳とか、父に対する敬意ということを考えることがある。
例えば、ある朝の食卓、家族四人でニュースを見ながら、食事をとっていたときのことだ。
「あのさあ、部活で神奈川まで遠征するんだ。だから、パスモにチャージしなくちゃいけないし、食事代ちょうだいね」
と、娘は少し不機嫌な顔で鶏肉のソテーを噛みしめながら、呟く。
「夏のインターシップでは、スーツがいるらしいんだよね。最初の打ち合わせから、スーツでといわれているんだ」
下着姿のままの息子が炭酸水を飲みながら、つまらなそうに言う。
「ということで、お願いね。いろいろと」
妻は、当然ながらという感じで、でわたしにコーヒーを差し出す。わたしの好きな薄めのコーヒーだ。
少し面白くないわたしとしては、知らぬそぶりで言い返してみた。
「お願いって、何を?」
「めんどくさいなあ! もう」息子は少しキレ気味だ。
「ふん」と娘は私の方を見ることすらしない。
わたしは嘆息する。多勢に無勢だ。
「今日は遅くなるから、明日ね」わたしは仕方なく、告げる。
「何時に帰ってくるの?」諦めがにじむ声で妻が聞いてくる。
「11時過ぎかな」
「またあ、どうせ池袋でしょう」娘がうんざりしたように言い捨てる。
「あ~あ」と息子も同調する。
「まあ、それはいいけど、ゴミ出していってよね」と妻は助け船を出してはくれなかった。
「ゴミは出す。しかし、夜遅いのは、確かに池袋の書店に行くためだけれど、それは勉強であり、将来の新しい仕事のためなのだ。決して、遊んでいるわけではないのだよ」
少し厳かにいった。
「でも、好きなことしているんでしょ」
娘の言い方はきつめだ。
「勉強は好きだし、将来の仕事も好きなことだ」
「ふ~~~ん」と鼻で返事をして、息子はダイニングを出て行く。
娘は食卓を片付け、勉強をはじめた。
妻は、テレビの朝の情報番組の懸賞応募に目を奪われている。
やれやれ。
父親が、夫が仕事をする、一家を支えるために粉骨砕身、刻苦勉励しているのに、なんてことだ。
ここでは、その勉強とその将来的な仕事、ささやかだけれど僅かばかりの仕事の証拠を見せなくてはならない。
そうしなければ、この誤解というか、諦観というか、軽侮されている状態を解消できない。

池袋に行って、勉強し、少し将来の仕事のことに携わったのだ。
こたつのテーブルの上に、その成果が乗っている。
この仕事には、僅かだがかかわった。
しっかりと形として残るものだ。

これを、この雑誌『READING LIFE』を見せたい。

確信を持って、この雑誌は素晴らしい、と言える。
しかし、家族に見せることはできないのではないか、と思う。
けれども、見せないと、ただわたしが遊んでいただけになってしまう。
威厳とか敬意からは遠ざかる。

だが、この雑誌をみせることはやはり躊躇われる。
なぜ、素晴らしいといいながら、家族に見せる、読ませること逡巡するのには、理由がある。

妻は、京都が好きだ。
機会があれば、京都に行っている。
滋賀県で仕事があれば、泊まりは京都にしている。
大阪で仕事があっても、前泊は京都だ。後泊も京都だ。
それほどに京都LOVEなのだ。
その京都LOVEな妻が、この『READING LIFE』を読んだら、どうなるだろう。
こんな京都は知らなかったと嘆き悲しみ、
この雑誌を片手にふらふらと京都に出かけていってしまうだろう。
そして、祇園の近くにある京都天狼院にいってしまうのではないだろうか。
京都天狼院の造作のひとつひとつを確かめたりするかもしれない。
京都天狼院の一階で、素敵な庭とこたつを見つけるだろう。

そして、そして、わたしの記事を読んだら……
考えるだに恐ろしい。

技術系の学校に通う息子は、十代も終わりも近づいている。
理系の男子としては、『READING LIFE』を読んで職人の技とかには興味を持つかもしれない。
しかし、二十歳前の男の子が考えることは、まあ、あれだ、異性のことか、異性のことか、異性のことしかない。
しかも、息子の通う学校は、クラスに1名女子がいるかいないかの、ほぼ男子校である。
京都の職人の話の他には、博多美人特集がある。これは男子にはたまらないだろう。
こんなに美人がいるなら、博多に就職するなんて言いだしかねない、どうしたものか。
そして、わたしのページをみたら……

「チチ(我が家ではこう呼ばせている)は、仕事といって福岡にいっていると思っていたら……」
どんな目で見られることか……。

チチといえば、「チチ」も載っている。
あのページは、二十歳前の男子には毒だ。
決して扇情的だというのではない。むしろ、芸術的なのだ。
が、若い頃は絵画の「ヴィーナスの誕生」を見ても鼻血が出るくらいだからなあ。
あの写真のページを見たら……。

娘は、思春期前期あたりにいる。
本が好きな娘には「出してからおいで大賞」が面白いだろう。美しくて、そして……な物語に惹かれるはずだ。
だが、しかし、否、待て待て、それだけでは済まないのではないか。
娘も、博多美人特集には惹かれるだろう。
息子は写真を見るだろうけれど、娘はあの記事を読むだろう。
う~ん、思春期前期、中学生にはいささか刺激が強すぎないだろうか。
そして、あの「姫フォト」は……。
扉が美しい。
女子は美しい女性に憧れるものらしい。
あの美しい写真をみて、
「わたしもこんな風に撮られたい」と言い出したら、どうすればいいのだ!

そして、わたしの記事を読んだら
「なんだ、仕事だといって大阪に行っていると思っていたら……」となじられるかもしないではないか。

悩ましい。
努力の成果が載った雑誌『READING LIFE』を家族に読ませたいのだが、
読めば

妻は、京都へ出奔し
息子は、鼻血を出し
娘は、モデルになりたいと妄想してしまうではないか。
人生を変えるどころではない、家族を変えてしまう雑誌『READING LIFE』である。

妻は、京都に行くときに一冊持っていくだろう
息子は、鼻血まみれにするかもしれない
娘は、雑誌を抱きしめて離さないかもしれない
わたしは、自分の記事を眺め悦に入るだろう。
一家に一冊ではなく一人一冊必要になるではないか。
人生を変えるどころではない、家計を変えてしまう雑誌『READING LIFE』である。

さて、どうしたものか。

わたしは煩悶する。
もしくは、懊悩に身悶えする。
困窮と言い換えてもいい。
ともかく、何冊買えばいいのかと思い悩んでしまう。

 

■雑誌『READING LIFE2017夏号』2,000円+税《現在、予約受付中!》

6月17日(土)19時から東京天狼院、福岡天狼院、京都天狼院各店にて発売開始・予約順にお渡しいたします。

 

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 雑誌『READING LIFE2017夏号』2,000円+税
6月17日(土)19時から東京天狼院、福岡天狼院、京都天狼院各店にて発売開始・予約順のお渡し

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