READING LIFE

「はい! おっぱいを万引きしない!」と叫びつつも、わたしは自分の失ったアイデンティティについて考えていました。「人生を変える」雑誌『READING LIFE』予約受付開始!《2017年6月17日(土)発売/東京・福岡・京都店舗予約・通販申し込みページ》


記事:安達美和

「人生を変える雑誌」これが、今度発売される雑誌「READING LIFE」のコンセプトです。

人生を、変える。

すごい響きじゃありませんか? 最初に、編集長であり天狼院書店店主の三浦さんの口からこの言葉が放たれた時、背中がぞくりと粟立つのを感じました。ワクワクドキドキするのと同時に、ちょっと怖い気もする。ごく一部の方を除いて、誰しも変化には怯えるものだと思います。

この雑誌を読むと、人生が変わってしまうんだ。
雑誌の発売前から、一体誰にこれを読ませようか、あの人に読ませたいこの人に読ませたいと、ひとりでニヤニヤしていました。

誰の人生が変わるところを見ようか。そんな風に、思っていたんです。

甘かった。

三浦編集長は、この『READING LIFE』のコンセプトを、「人生を変える雑誌」としました。そうなんです。一言も「読んだ人の人生を変える」なんて言ってないんです。変わるのは「読んだ人だけの人生」とは限りません。

端的に言ってしまうと、ハッキリと「いまこの人物の人生が変わった」と分かったのは雑誌の発売よりかなり前でした。当の本人が言うのだから、間違いありません。

最初に変わってしまったのは、他ならないわたしの人生でした。

驚きました。人生を変えさせられてしまうのは、この雑誌の「読者」であると当然のように思っていたので。イタズラを仕掛けようとニヤニヤしていたら、まんまと最初にその罠にかかった人間、それが他でもないわたしです。落とし穴のそこで間抜けな顔をして、「……へ?」と頭上の空を見上げている気分でした。

人生を変える雑誌と関わって、わたしに起きた大きな変化がひとつあります。いえ、ひとつで十分と言うべきかもしれません。なんたって、そのひとつは、長い間わたしをわたし足らしめている重要な要素だったので。

あるものを、失いました。そして多分、もう取り戻すことはできないと思います。それはわたしのアイデンティティとも言うべきものでした。

それが失われてしまったとハッキリ気づいたのは、4月の半ば、お芝居の稽古中でした。この雑誌にも掲載された『十八歳の処女だったわたしが同い年の男子に授乳していた日々について』という記事があるのですが、これを原作とした舞台をGWにスタジオ天狼院でやらせていただいたのでした。

わたしは役者と演出を兼ねていましたが、自分でも演じながら演出をするのは至難の技でした。そりゃそうです。普段の自分は普通の営業マンですから、そんなやすやすとこんなことがこなせるはずありません。ただもう、必死でした。ただもう夢中でで、他の役者の演出をつけながら、自分でも演じました。もちろん、共演の年若い男の子にも厳しくダメ出しをしました。

「はい! おっぱいを万引きしない!」
「すみません!」
「もげるかと思ったぜ」
「すみません!」

今どきの若者らしく、彼は紙の台本の方ではなく、スマホにダメ出しをメモしていました。わたしの言った言葉に忠実に、おっぱいを万引きしない、と打ち込む様子を見ていたら、少し前の『READING LIFE』編集会議のことが思い出されました。

その日の編集会議に、わたしは出席することができませんでした。その代り、自宅で会議の様子を生中継で視聴し、参加していました。

同日の朝、わたしの住まいである狭いアパートには、ライティング・ゼミ・プロフェッショナルで席を並べる女性と、モデルさん達がいました。記事に添える写真を撮るためです。ゼミ仲間の女性は、天狼院フォト部の中でも抜群にカメラのセンスが良いと評判で、そのことを耳にした時からもうこの人に頼むしかないと図々しくも撮影を依頼したのでした。

わたしの住まいは僻地です。
よく天狼院まで通えますね、と都内在住のゼミ仲間に気の毒な目で見られるほどには僻地です。日々の移動は小旅行と言ってさしつかえありません。

そんな場所へ、朝も早くから、彼女とモデルさん達は、わざわざ足を運んでくれました。使える時間も限られています。わたし達は、ああでもないこうでもないと、様々なポーズを取り、構図を変え、小道具を出したり引っ込めたりしながら、最高の一枚を探し求めました。記事を読んだ人が、さらに喜んでくれる一枚。いいね、と言ってもらえる一枚。

なんとか撮影も終わり、ゼミの女性とモデルさん達にお礼を言って、いよいよその一枚を編集会議に提出する時間がやってきました。PC画面で生中継の様子を見ながら、いつ写真を投稿しようかタイミングを計ります。会議の行方をじっと見ていましたが、結局、いつ投稿しても良いだろうと思って、タイミングもなにもなく、ひょいとその写真を投稿しました。

ひょい、と。だから、その後PC画面で起こった変化には、こちらがビックリしました。

ちょ……っと、マジか
えー、これマズいんじゃない?
うわ、モロだ……

動揺しました。編集会議がざわついたことに。
そんな風な反応が来るなんて思ってもいなかったんです。
出席なさっていた弁護士の先生が、努めて冷静にこうご質問されましたが、そのお声には当惑が入り混じっていたように聞こえました。

念のため確認ですが、このモデルの方は未成年ではありませんよね?

わたしは食い気味に答えました。

もちろんです! 未成年なわけがない!

実を言うと、内心、大いにホッとしていました。モデルの方々は「たまたま」未成年ではなかっただけで、というのもわたしはモデル選びの基準に「成人」していることを特に入れていませんでした。肉体美ということで言ったら、色、艶、張りは大変に重要です。だから、わたしがモデルさんに未成年を選んだ可能性も、なくはなかった。「たまたま」、そうではなかっただけで。

ドッと汗が噴き出して来るのが分かりました。胸は忙しくポンプ活動をしていました。
ジンジン痺れる指先を揉みながら、思いました。

この写真は、そんなにざわざわするものなのか……? 
わたし達はただ、良い写真を撮りたくて、喜んでもらいたくて、だから……。

自分では判断がつきかねました。
幸い、そのざわざわは非難ではなく驚きに近いもので、興奮と言っても良いものでしたが、それでも。

その後も編集会議は続き、雑誌の完成へまた一歩前進していました。

「はい! まただ、またキミはおっぱいを万引きしている」
「すみません!」
「そんなに勢いよくつかまなくて良いよ。ガッ! て、万引きじゃないんだから。素早く、でもわしづかみにはしないで。いい?」
「はい!」

編集会議に想いを馳せつつも、お芝居の稽古も大切です。わたしは、何度も何度もおっぱいを万引きされているうちに、はっきりと気づきました。

ああ、わたしのアイデンティティは完全に失われた。
三十年以上ずっと一緒に生きてきた、わたしのアイデンティティ。

「羞恥心」というアイデンティティ。

わたしは、幼い頃から異常なまでに恥ずかしがる性分でした。度が過ぎる人見知りでしたし、笑顔を見られることも死ぬほど恥ずかしかったので、写真を撮られる時には常に真顔でした。それだけではなく、言葉に対して恥ずかしいと思う気持ちも人一倍で、人前で口にできない言葉も多くありました。

その中のひとつが、おっぱいです。昔の自分だったら、こうしてPCのディスプレイに打ち込まれた「おっぱい」という単語すら、直視できなかったと思います。小学生の時、国語の授業で物語を音読させられましたが、二行目に「おっぱい」という単語が出てくることに気が付いたわたしは、一行目で早くも噛みました。緊張と羞恥で。

様々なことが恥ずかしくて恥ずかしくて、たまりませんでした。恥ずかしいと感じるこころがなくなったら、もはや自分ではない。そうすんなり思ってしまうくらい恥ずかしがり屋で。

それがどうしたことでしょう。この雑誌に関わることによって、わたしは自分そのものとも言える羞恥心をまるごと失いました。

それどころか、お芝居の稽古とは言え、年若い男の子にガンガン胸をわしづかみにされている。
それに対して、特に恥ずかしいとも思わず、どうすればこのシーンを見たお客様に笑ってもらえるか、喜んでもらえるか、そればかり考えている。

いや、その前になんだよ、「おっぱいを万引き」、ってよ。
「おっぱい」と口にするくらいなら死んでしまいたいと思っていた自分が、「はい! おっぱいを万引きしない!」となんのためらいもなく叫んでいる。

もう分かりません。何が恥ずかしくて、何は恥ずかしくないのか。
代わりに、ただひとつ分かるのは、喜んでもらえるならなんだって良いと思うようになったということです。

あなたが喜んでくれるなら、あなたが笑ってくれるなら、あなたが胸を高鳴らせてくれるなら、なんだってやりたい。
わたしの人生が変わってしまったように、あなたの人生を変えたい。
そう思うようになりました。

この雑誌を読んだあなたの人生がどう変わるか、本当に楽しみです。

気がついたら、京都行きの切符が手の中にあるかもしれません。
もしかしたら、博多美人を拝む為、福岡行きの航空チケットを取ってしまうかもしれません。
意識を取り戻した時には、なぜか通帳の残高が突然2651円になっていて、代わりにピカピカのカメラが数台机の上に置かれている可能性もあります。
そして、ふと我に返った時には恋人でもない異性に授乳しているかもしれません。

あなたがなにを失ってなにを得るのか。
あなたの人生がどんな風に変わるのか。

楽しみでしょうがありません。

【雑誌『READING LIFE』予約する際の注意と通信販売について】
いつもありがとうございます。雑誌『READING LIFE』副編集長の川代でございます。
『READING LIFE』は3,000部作りますが、発売日にお渡しできる分の数に限りがございます。確実に手に入れたい方はご予約をおすすめ致します。初回限定特典として、ご予約先着順にて、雑誌『READING LIFE創刊号』(2160円相当)を差し上げます。この創刊号のお渡しは、なくなり次第終了となります。ご了承ください。
また、万が一予約が殺到した場合、予約順でのお渡しとなりますのでご了承くださいませ。

店頭、お電話、メール、下の問い合わせフォーム、Facebookメッセージなど、あらゆる方法で予約受付致します。

 雑誌『READING LIFE2017夏号』2,000円+税
6月17日(土)19時から東京天狼院、福岡天狼院、京都天狼院各店にて発売開始・予約順のお渡し

今回は通信販売も同時に受付開始します。通販での受付も予約受付順の発送となります。PayPalでの決済完了時間が予約受付時間となります。
通信販売の場合、送料・手数料として500円別途頂きますが、その代わりに天狼院書店でご利用頂ける「コーヒーチケット(360円相当)」をおつけしますので、店舗に来る際に、ぜひ、天狼院でご利用頂ければと思います。
通信販売分は、発売日より、予約順に順次発送致します。

《一般先行予約》*雑誌『READING LIFE創刊号』つき
雑誌『READING LIFE2017夏号』2,000円+税





《通販先行予約》*雑誌『READING LIFE創刊号』つき
雑誌『READING LIFE2017夏号』2,000円+税
送料・手数料 500円(*360円相当コーヒーチケットつき)
発売日から予約順の発送





 

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