私は一枚の写真で183,120円の購入をとりやめた!!
記事:石崎 洋平 (マーケティング・ライティング)
「あぁー、これ凄いですね!!」
「触るんじゃなかった!!」
「正直いって無茶苦茶欲しいです!!」
今から半年前、世の中はクリスマス気分一色の中、通勤帰りの21時50分頃「自分のクリスマスプレゼントにしようかな?」などと言い訳をしながら冷やかし半分で立ち寄ったヨドバシカメラ町田店。
周りの人達から、良いよ良いよと聞かされていたカメラ「ソニーのα7II」を見にきていた。
一応、もうかれこれ7年くらい前に販売された一眼レフのデジカメを自分でも一台持っているので、自分へのプレゼントと言いつつもまだまだ使えるので内心では全く購入する気など無かった。
まあそうはいっても、新しいカメラであちこちから良いよと言われれば触ってみたくなるのが人情ってもんで年賀状で使うプリンターのインクを買いに来たついでにカメラコーナーへ足を運んでみたのである。
良いと聞いていたのは、α7シリーズの中でも最上位機種のα7RIIだが正直いって金銭的にも手が出ないので買えそうな金額のα7IIを手にとって楽しんでみる事にする。
ところが、これが大きな間違えだった……。
上位機種の半分以下の値段だが良い、すごく良い!!
スペッックなどは、あらかじめ見聞きしていたので店員さんから説明を受けても、これといって驚いたりすることはなかったが、それでもやはり触ってみると違う。
無骨な感じは昔のフィルムカメラの頃の一眼レフカメラを彷彿とさせ、しかも手にしっくりと馴染み非常に取り回しが良い感じになっている。
機能は手ぶれ補正機能が優れているとか、1秒間に5枚の連射機能がある、人の目に自動でピントを合わせてくれるなどなど。
そして何よりこの大きさで、35㎜フィルム(一般的なフィルムカメラ用のフィルム)と同じ大きさのセンサーであるフルサイズのセンサーを搭載し、しかもカメラをやったことのある人なら一度は使ってみたいカメラは「ライカ」レンズは「ツァイス」という誰しも一度は憧れるツァイスのレンズが搭載できる。
本当に凄い。
そして、それ以外にも語るスペックは沢山ある。
これが、レンズ込みで19万円とちょっとだった。
買う価値あり!!
これなら生活は少し苦しくなるけど買える!!
どうしようかな?
でも次の機種が出たら、もう少し安くなるんじゃない?
そう自分に言い聞かせて、その日は22時閉店ということもあり、ものすごく後ろ髪を引かれながらも予想以上に興奮してしまった頭を少し冷やした方が良いと判断して帰宅をする事にする。
それからは、もうカメラコーナーには近寄らないようにする。
そうしないと生活が苦しくなるのに買ってしまうから、もう逃げの一手を決めこむ。
そして今度行くときには、ちゃんとそれ用に軍資金を貯めてからにしようと心に決める。
そんなこんなで、約半年後の6月17日に運命的な写真との出会いをする。
その写真は、私が中学時代に写真部に入り同じく写真を趣味としていた父から言われた言葉を思い出させられた。
「考えて撮れ」
「呼吸を読め」
当時は、デジカメもなく写真といえばフィルムカメラ私が中学生に入った頃はちょうど「写ルンです」という安い使い捨てカメラが流行った時代だった。
確か「写ルンです」は1,000円くらいで購入できたと思うが一応写真部に所属していた私は親のカメラを借りていたので、フィルム代の300円くらいだった。
それでも、当時の小遣いが500円だった私にとってはフィルムも満足に買えないのでフィルムは小遣いからではなく部活の活動費として別途出してもらえる事になった。
それが嬉しくて嬉しくて、パシャパシャと写真を撮りまくっていたら一月目に父から「もっと考えて撮れ」と言われてしまったのでした。
そして「一発必中、呼吸を読め」とも。
最近のカメラは、デジカメが主流でフィルムを使わないのでパシャパシャ撮れる。
それこそ、一秒間に5枚撮っても痛くも痒くもない。
昔のフィルムカメラは多くても36枚撮りだったので、1秒間に5枚というと約7秒で終わってしまう。
友人たちとの写真談義になるとデジカメは失敗したら撮り直せばいいし、呼吸を読んでとり逃がすよりも迷わずに連射をして撮った方が良い写真を撮ることができるという話がよく出てくる。
でもそんな話をしながら、心の中でちょっと納得できない自分がいた。
そんな時に手にとった一冊の雑誌「READING LIFE」2017年夏号。
この雑誌の中に使われている写真は、プロの方からアマチュアの方までいらっしゃるが、その中にある「一枚の写真」が私のカメラ購入熱を冷めさせた。
これこそが、私の父の言葉。
「考えて撮れ」
「呼吸を読め」
もう18年前に他界した父の言葉が私の中で蘇る
半年たって購入資金も貯まってきたが、今あるカメラをしっかりと使おうと思う。
私の見た写真は「写ルンです」で撮影されています。
《終わり》
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雑誌『READING LIFE2017夏号』2,000円+税
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