天狼院通信

隠密行動《天狼院通信》


【隠密行動】2014年11月13日、豊島公会堂での劇団天狼院旗揚げ公演が終わったその夜、僕はひとり、風呂の中で絶望に打ちひしがれていた。
正直告白すると、ひとりで風呂でおいおいと声を上げて泣いていた。
旗揚げ公演『膝上29センチ以下の彼女』は802名の会場の1割も埋められなかった。チケット販売実数として70枚というのがその記録である。そのとき、来ていただいたお客様には本当に感謝している。
たしかに、様々な言い訳ができた。
雑誌『READING LIFE』の発刊が11月8日であったし、前日に開催した300人超を集めた11月12日のシンポジウムもあった。それらの準備でスケジュールが押されまくり、劇団天狼院の準備にとりかかるのが圧倒的に遅れたのだ。脚本が仕上がったのが、本番の9日前だった。集客までには手が回らなかった。
また、旗揚げ公演なのだから、それくらい集められ、無事に公演できただけでも立派だという声もあった。
ただし、僕が掲げた目標は802名満席だった。
目標未到達。
しかも、圧倒的な惨敗。
興行主として、そして演劇の制作者として圧倒的な敗北だった。
そのリベンジを図るべく、一週間以内に3月22日の豊島公会堂を押さえた。春公演を決めて、タイトルもそのとき決めた。

それが『世界で一番美しい死体〜天狼院殺人事件〜』だった。

今回は、負けるわけには行かなった。
掲げた目標は、802人満席のスタンディング・オベーションだった。

それを実現するためには、普通のアプローチでは無理だと考えた。
それなので、まずは映画と演劇の同日上映・上演を決めた。
そして、強烈な光をその中心に据えようと考えた。

まだ、芸能界も目をつけていない、これからまさに輝こうとしているスター候補を、僕は仕事の合間に探していた。

候補は6人に絞られた。

その中でも、抜きん出て、圧倒的な光を放っていたのが、御伽ねこむという子だった。
御伽ねこむは「日本一かわいいコスプレイヤー」として限られた業界では有名だったが、僕はコスプレイヤーには全くもって興味がなかったので、まるで知らなかった。
劇団天狼院・映画部で「御伽ねこむを起用しようと思う」と発表したときも、誰一人としてその名前を知らなかった。

しかし、僕にはそのとき、確信があった。
この子は必ず近い将来、大きく羽ばたくことになると。

今朝早く、 山本 海鈴​からLINEがあった。

「ねこむPがコンビニに並んでいます!週刊ヤングジャンプに載っています!」

来たかと思った。

朝飯を買いに、コンビニに行くと、たしかに週刊ヤングジャンプに御伽ねこむが載っていた。

ただ、うれしく思う一方で、僕はどこかしら不満だった。
なんだ、巻頭グラビアじゃないのかと。

御伽ねこむには、もっとポテンシャルがあると思っている。
巻頭グラビアでも、当然行けると思うし、様々な分野でこれから活躍して行くだろうと思う。

旗揚げ公演から4ヶ月に上映・公演した、映画・演劇『世界で一番美しい死体〜天狼院殺人事件〜』は、605枚のチケットが売れた。実に、4ヶ月で9倍に伸びたことになる。
そして、客席のおよそ四分の一がスタンディング・オベーションをしてくれていた。

けれども、終わったとき、僕は豊島公会堂の全体を見渡せる2階席で頭を抱えていた。
目標が、802席満席でのスタンディング・オベーションだったからだ。

僕は、また、ひとり、絶望に打ちひしがれていた。

次こそは、必ず目標を達成しようといち早く、12月22日の豊島公会堂を抑えた。そして、10月にも同じく豊島公会堂で劇団天狼院の秋公演を公演しようと考えている。

その原作を、すでに密かに準備している。

そして、次の御伽ねこむを、密かに準備している。

今、隠密で、その制作を進行させている。
天狼院のスタッフも、その全容を誰も把握していない。

次は更に面白いことになると、僕は確信している。


2015-05-21 | Posted in 天狼院通信, 記事

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