【三浦版「恋愛論」】大切な人ができれば本当に人は強くなるのだろうか《天狼院通信》
「最近、三浦さん、恋に関するフェイクの記事、多く書いてますよね?」
と、スタッフに言われた。
たしかに、女性に対する「恋」に見せかけて、実は擬人化した「福岡」に関する想いを綴った記事であったり、フィクションめいた記事を、最近、数多く書いている。
それなので、多くの方は、僕が「恋」という文字が入った記事を書いているのをみると、きっと、あ、またフェイクね、と思ったり、どうせなんかオチがあるんでしょ?と思う人が多いはずだ。
実は、そのみんなの思い込みの「隙」をついて、フェイクに織り交ぜて、本当の「恋」についての記事も書いていたりする。
面白いほどに、気づかれていない。
そう、本人以外には。
彼女は僕にとって「スペシャル」である。
しかし、なにがスペシャルなのかと問われれば、一瞬、言葉に詰まる。
合理的に説明しようと思えば、できるだろうけれども、説明してしまえばきっと陳腐になるだろうと思うからだ。
ただ、しっくり来る。
側にいると安心できて、面白くて、たとえ少しイライラしていたとしても、一緒に過ごせばいつの間にか鼻歌になっていて、いないと何か物足りなさを感じるというような。
でも、それは「切望」や「渇望」ではなくて、程よいくらいの「物足りなさ」であって、返信がなくて心配になり、「既読」確認するような類の枯渇感ではない。
「刺激」というよりか、「安心感」であって、もちろん、普段から、いいな、綺麗だなとは思うのだけれども、彼女が綺麗なことはほとんど当たり前のことになっていて、それゆえにその加減もちょうどいいのだ。
もっとも、「彼女」と言っても、微妙なところなのだ。
一方的に、こちらの想いを告げて、一度も正式に答えを聞いていないからだ。
僕は、あえて、答えを求めるようなこともしない。
ちょっと乱暴なことを言ってしまえば、僕は、相手の想いというものは、こちらからどうにもならないと半ば諦めている。
どうにかしようとすると、どこかで「作意」が働くし、下手をすれば、人は知らない間に「かけひき」しようと企むことになる。
よく、友人なぞに相談したときには、「恋とはかけひきで、勝ち負けなんだ、押してだめなら引いてみろ」的なことを得意顔で吹き込まれるだろう。
けれども、端的に言って僕はそういうのが、きらい、である。
ポーカーのように「かけひき」することは一切せずに、手の内のカードを最初から全部相手に見せる。
僕はこう想っていて、君とはこうなりたいと想っていると、悪びれることもなく、恥じることもなく、おそらく、堂々と想いを伝える。
相手が、冗談だと思うほどに、だ。
ところが、相手も、僕が嘘はもちろん、冗談すら言わない性格だと知ると、本気なのかな、と徐々に思ってくるようになってくるだろう、きっと。
もちろん、手の内をすべて相手に見せているわけだから、恋愛において、僕のほうがいわゆる「勝つ」ことは決してない。
なぜなら、こちらはすべて見せているというのに、相手は手の内のカードを明かす必要がないからだ。
こちらがワンペアかツーペアなのか相手に見えていて、相手の役はわからないのだから、そもそも、ゲームとして、成り立たない。
そう、僕は恋愛を決してゲームにしたくはないのだ。
たとえば、本当に相手のことを想っているのならば、「恋のかけひき」など絶対にできないはずだ。かけひき、とは相手をある種、愚弄する行為だと僕は思っている。
それなので、僕は彼女に、こんな言い方をする。
「本気で口説いている本人にいうのもなんなんだけど、正直僕は今、悩んでいるんだよね」
「なにをですか?」
と、彼女は言う。本気で口説いている本人にいうのもなんなんだけど、と言われても彼女は特段には驚かない。僕は常に、真正面から想いを伝え続けているからだ。
「たとえば、僕らがうまくいったとして、(彼女の名前)が僕の大切な人になれば、僕は強くなるだろうか。それとも弱くなるだろうか」
これは、本当に悩んでいることだった。
僕は家族を持ったことがない。それゆえに自由にフルスロットルで働けるのではないかと思うときもある。
僕には大きな夢があって、それを実現するためには、やはり、犠牲にしなければならないこともあるのではないかと、ある種諦観しているところもあった。
けれども、家族を持った友人・知人たちをみると、まるでスーパーサイヤ人になったように、戦闘力を増しているのを見る場合がある。
自由を損なうというデメリットと、何らかのそれこそプライスレスな価値があるとすれば、それは天秤にかけられるものなのだろうか。あるいは、そもそも天秤にかけるべきことではないのではないだろうか。
僕にとって、これは未知のことだから、それはそうなってみなければわからないだろう。
ただ、彼女がどう思っているのか、聞いてみたかった。
彼女は僕がどういう人間なのかも、最終的にどんな未来を想い描いているのかも、ことごとく、知っている。
あれじゃないですか、と考える間もなく彼女は快活に言った。
「ヒーローものの話でよくあるじゃないですか」
「ヒーローもの?」
ヒーローものと恋愛がどう結びつくのか、僕にはまるで見当がつかない。
うん、と彼女は頷く。
「最初は、弱点として、大切な人を敵に人質として取られて、こんなんなら家族を持つんじゃなかったー!って思うけど、最後はやっぱり、大切な人のおかげでそれまでになかったパワーが出て、勝っちゃうんですよ! ほら、よくありますよね?」
「うん、たしかにある」
「敵も最後には、なんでそんなパワーが出るんだ―!ってやられるんです!」
あまりにシンプルな答えに、僕は笑ってしまった。
笑ってしまったが、もしかして、と思うところがあった。
この答えに、僕が知りたかった答えが明確に示されているんじゃないかと。
「それ、そのとおりかもしれない。世の中って、案外、ヒーローものが大昔から示しているように、シンプルなのかも」
「そうですよ」
と、彼女は笑った。
「それにしても、どんな頭の中になっているんだよ」
「え? ふつうですよ」
「ふつうじゃないよ」
そう、彼女は妄想が始まると止まらないのだ。僕は彼女のそういうところも好きなのだ。
僕は、本人にだけでなく、彼女のことが好きなこと、本気なことは、聞かれれば素直に答えている。
別に恥ずかしいことでもないし、隠してもいいことがあるとは思えないからだ。
しかし、みんなにとっては意外らしい。
そもそも、僕が真面目に恋愛のことを考えていること自体がまずもって考えられないらしい。
ま、みんな本気にしてはくれないのだが、周りが本気にしてくれようが本気にしなかろうが、はっきりいってしまえば、僕にはどうでもいいことだ。
真実は、しっかりと僕がわかっていればいい。
そして、本人にだけちゃんと伝わっていればいい。
昨日、天狼院のスタッフで決起大会をしたときのことだ。
僕と店長のなっちゃんで、西武の食品売り場に買い出しに行った。
その途中でのことだった。
僕は、なっちゃんにこう言った。
「彼女のこと、みんなに話したほうがいいかな?」
実は、唯一、なっちゃんには、全てを話しているのだ。僕の恋愛についても、そして、これからの天狼院の展望についても。
何か、黙っていないで、すべて公にしたほうがいいのではないかと僕は思っていたのだ。
でも、なっちゃんはこう言ったのだ。
「全部、明かさなくてもいいんじゃないんですか? 秘本とかも、隠しているから楽しんでもらっているんだし」
なっちゃんは、若いけれども、本質的なことを言う。だから、いつも彼女に意見を聞いてみる。
「そうだよね、全部、ワカメちゃんになってしまったら、興冷めだもんね!」
「そうですよ!」
と、なっちゃんは笑う。
「チラリくらいがちょうどいい」
そういえば、となっちゃんは言う。
「この前の、5月の風の記事、わたしのともだちがとても気に入ったみたいで。三浦さんみたいな恋をしたいって言ってて」
ああ、あの記事か、と僕は笑う。
実は、前に書いた、「たとえばそれが「恋」だとすれば」という記事は、彼女に向けた、彼女だけしか気づかないように書いた僕からのラブレターだったのだ。
それが誰に宛てたものだったのかも、なっちゃんだけが知っている。
この記事も、「彼女」だけにわかるように書いてある。
上に書いた、全てがノンフィクションである。すべて、真実である。
けれども、ひとつのミステリーが込められている。
そのミステリーを解けるのも、唯一、「彼女」しかいない。
この記事自体も、僕から「彼女」へのラブレターだ。
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