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チーム天狼院

【結果】女子大生が、炎天下の「長岡大花火」で「本」を売ってきた。~果たして何冊売れて、何を学んだのか?~《海鈴のアイデアクリップ》


8月2日。
まだ朝だというのに、すでに体が溶けてしまいそうな気温の中、
私はひとり東京駅に向かっていた。

待ちあわせ場所は、新幹線のり場の改札前。
長岡行きの切符を手に、よく見知った顔と合流する。

チーム天狼院、集合である。

そう、この日、私たちは合戦に出ようとしていた。

決戦の地は、新潟・長岡。
迎え撃つは、50万人の刺客。

炎天下の「長岡大花火」で、私たちは、無謀にも、「本」を売りに出ようとしていた。

じつは、去年も同じことにチャレンジをし、実売10冊という結果に終わったのだ。

教訓をもとに、今年はさらなる戦力を投入。
さらに、傾向と対策も考え出した。

「これならイケる!」
「売りまくってやるぞ~!」

意気揚々と、戦地に向かったのであった。

新幹線

目標は、100冊・完・売。

花火に来た人向けに考えた「新しい売り方」がヒットし、ふつうに考えれば本を売るなんてありえない場所にもかかわらず100冊を売り上げる、という伝説を打ち立てて帰京する・・・

はずだった。

結果からお伝えする。
「長岡大花火」で、売ることができた「本」の数は、9冊。

惨敗だった。

リベンジを果たすはずが、去年の10冊を1冊下回る結果となってしまった。

【リベンジ】女子大生が、炎天下の「長岡大花火」で「本」の売り方を考えてみた。〜目標、100冊・完・売。失敗から見えた課題とメソッド〜《海鈴のアイデアクリップ》

あれだけ、花火大会用の売り方を考え、準備もしていったのに。
【長岡スペシャル】という名前までつけていったのに。

いったい、何が原因だったのだろう。

まず、私が去年の結果から考えてみた仮説は、こうだった。

長岡大花火に来た人の目的は、「花火を楽しむ」こと。
それなら、「花火を楽しむ」ことに対する効用が高ければ、本は売れるのではないか。

ディズニーランドでは、たくさんの人がミッキー型のカチューシャをつけ、大きなポップコーンのケースをぶら下げて園内を歩いている姿を見かける。どんなに帰りの荷物になろうとも、だ。

それは、「ディズニーランドに来たのだから、できるだけその場の雰囲気を楽しみたい」という欲求からくるものではないだろうか。

さらに、園内を歩く人が持っている食べものやグッズを見ると、人のものが異様に欲しくなってしまうことがある。

そんな傾向をもとに考えてみた特別な売り方が、【長岡スペシャル】である。

【長岡スペシャル】の狙いは、こうだ。
①「花火を楽しむ」ために来た人に売るのであれば、その雰囲気をさらに楽しめるように「持っていることが価値になる」商品にすれば、売れるのではないか。
②「持っていることが価値になる」商品であれば、それを見た人がまたさらに注目して興味を持ってくれることで、連鎖的に売れるのではないか。

ヴェールに包まれていたそのビジュアルは、こちら。

長岡スペシャル

包装には、ちょっとイイ和紙を使い、和菓子のお土産品のようなビジュアルになるようにした。浴衣との相性はバッチリだ。一緒に持つと、さらに和の雰囲気がアップ。持ってるだけで、とてもカワイイ。

花火大会の最中は、どうせがっつり読むことができない。荷物になるという弱点が考えられたが、それならば「荷物になっている」状態が価値になってしまえばよい。持っているだけで楽しめる、花火大会の気分をアップさせるものになればいいのだ。

さらに期待したのが、「隣の芝生は青く見える」現象である。
まわりの人が【長岡スペシャル】を手に持っているのを見て、

「あれ何だろう? めっちゃカワイイ!」

と期待値を上げてくれる。ブースを発見したときには、

「あ、さっきの人が持ってたやつだ!」

と、興味を持ってもらえるような連鎖も狙ったのだ。

出発する前にも、天狼院にいらっしゃっていたお客様に見せると、

「これ、いいね! めちゃくちゃカワイイ! 欲しくなる」

という声をいただいた。

家に帰ってからも、包みを開くときのワクワクや、喜びも味わえるつくりになっていた。
売れるための種は、さまざまなところにばら撒いていた、はずだったのだ。

 

売っているあいだも、予想外の出来事がたくさん起きた。

「ここでしたら、使っていただいて大丈夫です」

市役所の方に通され、私たちがブースを構えたところは、長岡市役所の敷地にある、広いスペースだった。

たくさんの屋台が軒をつらね、アイスクリームだの、お肉だの、いたるところから美味しそうな香りがただよってくる。
ホールとも隣接していて、そこではさまざまな団体がダンス発表会のような催しをしていた。

ちょうど日陰だ。食べものの屋台から流れた人が、そのままたどりつく場所になっている。
隣には、テーブルやイスがたくさん並んでおり、一休みしている大勢の人がいた。

「これは、去年より好条件の場所かもしれない……」

用意した浴衣に着替えると、気分はいっきにお祭りモードだ。
しかし、日蔭とはいえど、外はすでに35度を大きく上回っていたと思う。本を運んでくるだけで、すでに汗びっしょりになっていた。
したたる汗を拭き、しっかり水分を補給する。
ブース前に大きな『白菊』の看板を立て、私たちは浴衣の帯を締め直した。
時間は、12時30分。いよいよ、販売開始だ。

白菊

「長岡花火の本、『白菊』はいかがですかー?」
「特別包装版で、限定販売しておりますー!」
「今ならポストカードもついておりますー!」

高らかに声をあげて呼びかけた瞬間、まわりの人の目が、ぐわっと一気にこちらを向いた。みんな、もの珍しそうに、じろじろこちらを見てくる。
ブースを出した直後だから、珍しそうに見られているんだな、と思った。時間が経ち、この会場にもなじんでくれば、自然と人も集まってくるだろう。そう思って声掛けを続けた。

10分ほど経過したころだろうか。
私たちは、どこか言いようのない不穏な気配を感じはじめていた。

人が、なかなか立ち寄ってくれないのである。
それどころか、ブースが少し遠巻きにされているような気さえした。

不安を吹き飛ばすべく、私たちは大声で呼び込みを続けた。
ワンパターンでは通用しないと思い、声掛けのバリエーションもさまざまなものを使ってみた。

「天狼院書店でございます! 『白菊』に惚れ込み、この日のために東京から出張にきております!」
「『なぜ、長岡花火は泣けるのか?』。その背景に込められた想いに触れてみてください!」
「読めば、さらに長岡花火が感動できるかと思います!」

もはや、街頭演説だ。

少しでも手前で足を止める人がいようものなら、すかさず懐に入りこむ。

「お兄さん! これ、いかがですか? 長岡花火の本なんですよ! ほんっと面白いんです。読むだけで、長岡花火の見方がめちゃくちゃ変わります!」

けれど、

「はあ。ええ、でも僕、本、読まないんでね、すいません~」

そう言って、立ち去られることがかなりあった。

また、若いチャラチャラした3人組が声をかけてきた。
お、こんな見た目して、案外本を読むなんて、好印象じゃないか。
どんな理由で興味を持ってくれたか気になって、いくつか質問をする。

長岡花火には、何度かいらっしゃったことございますか? あ、初めてなんですね!
『白菊』は、鎮魂の花火でして。伝説の花火師・嘉瀬誠次さんが、戦争で失った友人にたむけたものなんです・・・。

質問をつづけていると、話は意外な方向に展開していった。

「そんなことより、このあと、予定とかありますぅ? 花火、一緒に見に行ってくれるんだったら買ってもいいですけど~」

ただのナンパ師だった。
すかさず、後ろに控えていた店主・三浦が目を光らす。

「ちょ、ボスいるじゃないすかww」

3人組は、逃げるようにその場から立ち去って行った。

 

こちらの方をじーっと眺めている人がいると、きっとこの本に興味があるのだろう、と思って、近くに行って声を掛けてもみた。

「こちら、サンプルですので、ご覧になってみてください」

説明をしながら、『白菊』を手渡すと、意外な答えが返ってきた。

「いや、あの。写真、撮らせてもらっても、い、いいですか?」

はい……?

どうやら、浴衣を着て、声を張り上げて売り子をしている私たちを、なにかイベントのコンパニオンのようなものと勘違いしたようなのだ。

最初は、まあ、本に少しでも興味を持ってくれるのなら・・・という気持ちで、しぶしぶ撮影を許していた。

けれど、そのあとにも、写真撮影を要求してくる人が何人も現れた。
ときどき、許可を得ず、遠巻きからカメラを向け、勝手にシャッターを切っているような人も見受けられた。

さらには、こんなトンデモナイことも。

やはりこちらをじーっと見たまま立っているお客様がいた。もしかして、と思い、声をかけてみる。
ぼそぼそと何か返事をしてくれてはいるものの、よく聞こえない。耳を近づけて、聞いてみると・・・

「チアガールには、ならないんですか?」

ひいー! ちょっと、アブナイ!!

「ハイ、ありがとうございます! ありがとうございましたー! はーい、ありがとうございまーす!」

身の危険を感じ、遠回しに断り続ける、なんていう場面もあった。

 

去年の結果を受け、売り方を工夫すれば変わるんじゃないか、と思っていたのだが、実際に「花火大会」という場所で本を売ってみて、「本」自体に興味がある人がそもそもあまりいないのではないか、という結論に至った。
まるで、肉食獣たちがひしめきあっているサバンナで、「とっても新鮮! 健康的なフレッシュサラダです!」と、彼らがそもそも食べないものを売っているようなものだった。畑がぜんぜん違ったのかもしれない。

または、本を包装するという売り方に出てしまったため、何を売っているのかよく分からず、本に興味のあるターゲットに上手くアピールすることが出来なかったのかもしれない。
いったいどんな団体が本を売っているのかと、怪しまれたのかもしれない。天狼院の知名度を、もっと上げる必要がある。

これ以上続けても、厳しいのではないだろうか。
炎天下の屋外で、気温はどんどん上がっていった。外にいるだけでも体力を奪われていくのに、大声を張りつづけているものだから、かなり体力も消耗しつつあった。

あと30分、15時で撤退しよう。
店主・三浦が判断を下した。

その時点で、まだ実売7冊という、かなり厳しい状況だった。
それでも、なんとしてでも10冊には到達したい!
最後の力を振り絞って、呼び掛けをする私たちは、もう、鬼のような形相だった。

「東京から来てるんです!! それくらい、この『白菊』に惚れ込んでるんです!!」
「今日これなかった人へのお土産にもなります! 帰りの新幹線でも読めます!」
「花火が始まるまで、まだ時間ありますので、そのあいだにお読みいただけます!」
「ただボーッと見て『わ~綺麗~』で終わりじゃ、もったいないですよね! バックグラウンドも知ってもらうことで、長岡花火の感動がより深まります!!」

さらには、ブースを飛び出し、休憩所を練り歩いた。
看板を頭の上まで高く挙げ、全身で熱意をアピールした。

あまりの必死さに、ただごとではないと思ってくださったのだろう。
最後のフルスロットルをはじめてから、少し遠巻きに見ていた方が、一気に2名、本を買ってくれたのだ。
ここぞというとき、真剣な熱意というものは、きちんと人に伝わるものだと、感動した。

15時、撤退の時間になるころには、もう私たちは汗でドロドロ、喉はカスカス、体力も奪われもうヘトヘトだった。浴衣の帯も、いつのまにかゆるくなってきていた。

出店時間、計2時間半。
実売数、9冊。

昨年の10冊には届かなかったが、去年の場合、出店日が花火大会の2日目だった。
いっぽう、今年は1日目への出店だった。
去年、本を買ってくれた人は、前日にすでに花火を見終わっており、帰路につこうとしている人がほとんどだった。
そう考えると、これから花火を観に行く人に9冊を売り上げたことは、かなりの成果だったのではないだろうか。

残念ながら、計画していた【羽生メソッド】を実践することはできなかった。
【羽生メソッド】の種明かしをすると、これは会場までの道順にボードなどを設置しておき、ブースの認知度を上げ、期待値を上げてもらう効果を狙った作戦だった。
これは、私が日光の帰りに立ち寄った羽生パーキングエリアで、降りた瞬間に「かき氷」の看板を目にしたせいで、無意識にそのブースを探してしまっていたことから着想を得たものだった。
しかし、許可を取ることができず、しぶしぶ断念せざるを得なかった。
次回、何らかの形で【羽生メソッド】を実行したいと思っている。

かなり厳しい戦いではあった。
そんな中でも、やはり本を手に取ってくださった方との出会いは、ひとつひとつが貴重な経験だった。

ある方は、私たちと同じく東京から初めて長岡大花火に来たという。
「ただボーッと花火を見るだけだと、『わ~、なんか、綺麗だったね~』で終わっちゃうかもしれません。きっと、この本を読んで、その花火に込められた想いが分かると、花火ももっともっと感動できるものになると思います」
そう言うと、そうですね、読んでみます。これ、ください。と、そのお客様は『白菊』を大事そうに抱えていった。

ある方は、「これ、お土産に完璧だよ!」と、最高の褒め言葉をくださり、贈り物用に『白菊』セットを買ってくださった。

また、ある方は、FMながおかのラジオ放送を聞き、それで興味をもってわざわざ買いに来てくださったという。

ブースに足を止めた人の中には、もう『白菊』を持っている、という方までいた。『白菊』を読んで感動し、わざわざ福岡から、今年初めて長岡大花火を見に来たというのだ。
炎天下の中、少しでも興味を持っていただき、足を運んでいただいた方は、まるでからっからの砂漠に水瓶を持って現れた女神様のようだった。本当に、感謝の気持ちでいっぱいだ。

本を売りながら、私は著者である山崎まゆみさんの言葉を聞いた。

花火師・嘉瀬誠次さんがインタビューのなかで、おっしゃっていたそうだ。
長岡空襲、シベリア抑留など、戦争を経験した者は、いずれいなくなってしまう。嘉瀬さんは、山崎さんに、その想いをすべて話した。戦争の経験を伝える役割を、託されたのだと。
だから、私はこの本を一人でも多くの人に広める義務があるのだ。
山崎さんは、力強く、拳を握りしめて、そうおっしゃっていた。

それを聞いて、私の中で、「本を売る」とはどういうことなのか、かちんとパズルがはまったような気がした。
文字にしている限り、著者の想いは、未来永劫、本の中で生きつづける。
その想いは、なんとしてでも世に送り出したいと切に願う、価値のあるものなのだ。
いま店頭に並んでいる本は、ひとつひとつが、人の魂であり、想いであり、命なのではないだろうか。
そう考えると、呼び込みの言葉にも、自然と熱意がこもっていた。

書店にいると、当たり前のように本が売れていく。
けれど、今回あえてアウェーな場所で本を売ることで、そのひとつひとつがどれだけありがたいことなのか、身に染みて感じることができたのだ。

実売数では、去年の数値を上回ることができなかった。
けれど、数値以上に、そういった場所に出向いたことでしか手に入れられない貴重な経験をすることができた。お金で買えない、大切な価値観だと、私は思っている。

本に込められた想いが、人から人へとわたっていく。
出会いを提供できる書店員であることに誇りを感じる。そして、その出会いすべてを大切にしなければ、と身の引き締まる思いがした。

大仕事を終え、長岡の空に上がる花火を見ながら、私は考えた。
そのために、本に込められた想いまで伝えられるスタッフになろう、と。

白菊本
長岡スペシャル2

※現地で販売した『白菊』(著:山崎まゆみ/小学館)【長岡スペシャル】は、
天狼院書店・店頭、または通販でも、数量限定でお買い求めいただけます。
¥360相当の無料コーヒーチケットと、『白菊』特製ポストカード付きです。
二代目天狼院秘本でもある『白菊』。
まだ手元にない方は、ぜひ、この機会にゲットしていただければ、嬉しく思います。

【通販のお申込みはこちらから】

<『白菊』【長岡スペシャル】セット>
本体価格 1,500円
消費税 120円
送料手数料 500円
*送料手数料をいただくかわりに、天狼院書店でご利用になれる「コーヒーチケット(360円相当)」と、「『白菊』特製ポストカード」をお付けします。
合計 2,120円





 

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