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チーム天狼院

もしもタイムマシンがあったなら、一時間前に戻りたい。≪三宅のはんなり京だより≫


もしもタイムマシンがあったら、どこへ行きたい?
よくある質問だ。
私は大抵「平安時代かヴィクトリア朝!」と答える。
だけど本音の答えは、ちょっと違う。

私は二日に一度くらいの頻度で、「あー1時間前に戻りたい」と思う。

「今タイムマシンがあったら、絶対1時間前に戻るために使う」と心に誓う。

 

まぁ、タイムマシンがあった試しはないのだけれど。

**

 

さて、どういう時に「あー1時間前に戻りたい」と思うのか。

それは、たいてい「いい返答ができなかった時」だ。

 

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あなたは、日常の中で、自分の返答にどれくらい満足しているのだろう。

単純に疑問だ。みんな、自分に投げかけられた質問や発言に対する、自分の反応や返事に、どれくらい納得がいってるんだろう。

 

私は、二日に一度は「う~~~、こういう風に答えたかった」と思う。

ああしか答えられなかった自分を、本気でバカだと思う。

なんで、もっと、こう言えなかったのかなぁ、と。

 

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たとえば、学校の授業。
「三宅さんこれどう思う?」
そんなふうに投げかけられた質問に、私は頭をフル回転させて答えようとする。
頭の中のすっからかんの引き出しを、何か入ってないかと漁る。
そうして出てきた言葉はいつもぼんやりしていて、「こ、こういうことなんじゃないですかね」と微妙な答えで終わる。

そして授業が終わって、猛烈に後悔する。
図書館に行ってそのことについて調べて、「あーーーー私これ知ってたじゃん」とか「こ、こういう知識があればもっといいこと言えたのに」とか「ちくしょー、こういうこと言いたかった」とか、いくつもの脳内シミュレーションを重ねる。
頭の中の自分は誇らしげに笑うけど、結局現実の自分は悔しいままだ。
「あああタイムマシンがあったら過去の自分に教えてやりたい」って思う。

そして結局、来週の授業になれば、また同じことを繰り返す。

 

**

たとえば、友達とお茶してる時。

楽しく喋ってる中で、「ああ、これ」とちくりと胸を刺す瞬間がある。
友達が言った一言にどう返していいか分からなくて、
テンポの悪い、なんだか妙な返事になる。
あるいは、思いがけず相手に嫌な思いをさせる言葉を吐く。
もっと、頭の回転早く、ノリよく、思いやりを持った返事ができたのに。

そして帰り道、「あーいう時こういうふうに返せばよかったなぁ」と一人で反省する。
寝る前に、「こう言えばよかったんだ」と記憶を反芻する。
日記で、「なぜあんな発言をしたのか、自分」と原因を考える。
もちろん記憶は上書きされてくれないし、脳内シミュレーションは一生、頭の外を出ない。

そして「ああタイムマシンがあったら今すぐ使う」と思う。

 

**

自分で書いていて「なんつーうじうじした人間だ」と、顔をしかめたくなる。
「どんだけ見栄っ張りやねん、自分!」と、ツッコミを入れたい。
しかも同じことばかり繰り返して早22年目。一体どういうことだ。

「今度これ言われたらもっといい返答する」
って二日に一度は心に誓うのに、結局いい返答をする機会はやってこない。
コミュニケーションは、そもそもその場限りのものであることが前提だ。

 

だけど、最近になって思う。

今の私は、そういう後悔と反省の上にできているのだ、と。

答えられなかった質問も、思いやりを持てなかったおしゃべりも、うまく反応できなかった体験も、
積み重なって反省して悔しがってしょんぼりして、
その上に今の私がいるのだ。

 

失敗も無駄じゃなかったとかなんとか言うわけではなくて(だってその知識を私は一生使わないかもしれないし)、
なんというか、
その「答えられなかった言葉」に悔しがったことが、ひとつひとつ今の私の力になっているのだなぁ、と思う。

その知識や返事を使うことはなくても、確かに自分の引き出しの中にそれは収まっている。
一生その引き出しを外で開けることはなくても、引き出しの中にちゃんと何かがあるだけで、ちょっと私は安心する。
安心するから、「次はもっといい返答をしよう」って思える。

 

結局、後ろ向きだけどポジティブなのだ。
ポジティブで甘ちゃんだから、自分を諦めきれないし責めきれないのだ、私は。
それがいい性分かどうかは置いといて。

 

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あなたはどうだろう。
起こったことにくよくよしない性分だろうか。

なら全然構わないんだけれど、
まぁ、くよくよする性分だとしても、それはそれで使える能力だよって最近は思う。
どんな性格も一長一短で、使いようだ。

 

まだ性格を変えられるほどの科学技術もないみたいだし、自分で楽しく生きる方法を身に着けるしかない、と思う。
せめて、タイムマシンができるまでは。

 

**

もしもタイムマシンがあったら一時間前に戻るけれど、残念ながらまだ私の手元にタイムマシンはない。
だから今日も悔しがる。「うう、こういうふうに話したかった」って一人で嘆く。「ああ、こういう知識を知ってれば」って一人で記憶を反芻する。
いつか役に立つ日が来るだろうか。私の知らないうちに、役に立ってたりするのだろうか。

明日は「よくやったぞ自分」と言えることを期待して、私は今日も眠りにつく。
「うう、タイムマシンがあればなぁ」という後ろ向きなポジティブを反芻しながら。

 


2016-06-02 | Posted in チーム天狼院, 京都天狼院, 記事

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