チーム天狼院

大人になっても、容赦なく厳しいことを言ってくれる場所に私は身をおいていたい


記事:田中望美(チーム天狼院)

天狼院書店の小説家養成ゼミを、インターン生として受講し始めた。分からないなりに書いて、ワクワクドキドキしていた講評。評価は一言だった。

「日本語の勉強をしなさい。以上」

他の人は主人公の心の動きだとか、動機だとか、キャラ設定などいろんな評価をもらっているのに、私が数々の名著を編集者として関わってきた関根さんから告げられた言葉はその一言だった。一瞬そのことが受け入れられなくて、怒涛のような言い訳が私の頭の中を流れた。バタバタの中書いたからだとか、本当に書きたいものじゃなかったからだ、とか。でも、私は知っている。ここで言い訳をするのでは、うまくなれない。いい小説なんてかけない。むしろすべてを自分のせいにして、一つずつ課題を潰していくしかないのだ。大学3年生からライティングゼミに通い、劇団にも参加し、プロゼミを6期まで受けていた私は、反射的にそう思った。忙しくても書ける人は書けるし、読まれる記事を書く人は、どんなことをも面白いコンテンツにしてしまう。だから、この講評は少しも間違っていないのだ。単なる私の知識不足、実力不足。怠惰な覚悟がありありと表れた結果に過ぎないのだ。小説に関しては、まだまだ駆け出しで、スタート地点にすら立てていないのである。

確かに私は最近、ほぼ読書時間が取れていなかった。小説よりもビジネス書、自己啓発書、エッセイなど人生の価値観を唱えるものばかり読んでいた。それを読んで、自分もできるようなった感じになるのが気持ちよかったのかもしれない。でも、私には明確な目標がある。ものかきミュージカルダンサーになって、地球ゴージャスという実力派俳優岸谷五朗さんらがプロデュースするミュージカルの舞台に立つことだ。書いて、舞台に出て食べていけるようになる。この2足の草鞋でお客さんに夢や感動を届けられる人間になりたい。高校生の頃からこの夢、当たり前にある空気のように、私の中の信念は変わっていない。
正直今でも、小説家養成ゼミで言われた言葉が、心にグサッとナイフが刺さったままである。それに、この先もっとえぐられるかもしれないと思うと正直怖い。でも、この痛みは、自分の目標を実現するために通らなければならない道なのだと、天狼院書店は教えてくれた。多かれ少なかれ、全ての人が通る道。ここで逃げたら、目標が達成されないというただそれだけのこと。私は知識も経験も乏しく、語彙力もない。自分だけの世界観を醸し出せているかと言われれば、それすらない。本当に平凡な人間だと思う。だから、スタート地点は今期の本気でべストセラー作家を目指す人の中で最下位の書き手だろう。関根さんはスタッフだから厳しくいきますと言ってくださっていたが、そんなことはない、例えお客さんだとしても、真っ当な評価だったのだと思う。
私よりも書ける人は山ほどいる。でも、だから、私は人より何倍も書かなければならない。せめて、同じ目標を目指す小説家養成ゼミの方々の中では1番書いていなければ。
最悪な駆け出しが、こんなことを私に思わせてくれた。同時に最悪な駆け出しを最高の到達地点にする。そのイメージが湧いてきた。

こんな事もあった。

天狼院書店で働くようになってから、言葉にしにくい初めて感じる嫉妬感が私を渦巻いている。
スタッフ側から見たお客さんと、最近入ってきたインターンの子たちに対してだ。

初めて、私がライティングゼミを受けた時に感じた、あの感動と高揚を今彼らが感じていて、それを純粋に心から喜んでいる姿を見ると、心がモヤっとする。

同じ想いを抱いて共感すると、普通は嬉しいはずなのに、

天狼院書店って面白いですね、いいですね、もっと早く出会いたかったと、新しい世界に飛び出してこれからだ! と目をキラキラさせている姿を見ると、
そうですよねー!! と言いながらも、少し悔しい。

この間まで私が、その立場だったのに。
私が、1番そのことを感じていたのに。

今、彼らの気持ちが分かるはずなのに、どうしてか、分かりたくない自分もいる。素直に喜べない自分がいる。喜べない自分に嫌気がさしている。

この感情は一体なんなんだ?

誰かが子供を産んだり、結婚したり、仕事がうまくいったりした時は、素直に喜べるのに、なんで天狼院書店で働いている人の功績は、自分のことのように素直に喜べないんだ??
きっと心が汚れているからだ。きっと、私の大好きな真っ直ぐな心を持った漫画の主人公なら、心から人の喜びを讃えられて、応援できるのだろう。

でも、私にはできなかった。

多分、それだけ天狼院で働く自分がどうなりたいのかということに対する、気持ちが強いのだ。重いのだ。

でも、そう考えると、もしかしたらこんな気持ちを抱いているのは私だけじゃないかもしれないと思った。
もしかしたら、知らないうちに私も誰かにそんな思いを抱かせてしまっていたかもしれない。
だって、私が初めてここに来た時から天狼院書店でスタッフとして働いていた方々。
当時お客さんであった私をサポートしながら、どんなことを思っていたのだろうか??

劇団で主役をやらせてもらった時。
三浦さんに書いた記事を褒めてもらった時。
この場所で、他にも多くの経験と嬉しい言葉をもらった。抱えきれないほどだ。

そんな時、その場所にいたスタッフの方々はどんな思いだったのだろうか??
嬉しいけど嬉しくない。私だって。いいよね、あの子は。

そんな風に複雑な思いはしなかったのだろうか?

表には決して出せないけれど、心の奥でひっそりと抱えているこの思い。
多分、思いが強ければ強いほど、この複雑な感情が出てくるのだろう。

最近また、京都のスタッフが、メディアグランプリで週間1位に輝いた。そのことは、スタッフ全体ラインで報告され、祝福された。
天狼院書店のスタッフが書けるということは、店にとっても、私達にとって良いことである。

もし仮に、私のように、ライバル心を煮えたぎらせているスタッフが他にもいるとしたら、どうだろう?
おそらく、見えないところで、私だってという負けん気を発揮し、更なる地道な努力をするだろう。

そんな時、ふと、思い出した。

まだお客さんだった頃も、こんな感情を抱いていた。いつも面白い記事を書くスタッフの方に。いつも高い評価を得るお客さんに。
嫉妬し、負けるもんか、私だって自分の目標に一歩ずつ近づいてるんだと鼓舞し、書き続けた。

ああ、天狼院書店にいるから、こんな想いをするのだ。
私が、お客だとか、スタッフになったからだというのは、関係がない。
この、本の先の体験を通して人生を変えるというコンッセプトを持つ「天狼院書店」というこの場所が、私を目指す目標へと、後ろからどんどん突き上げるのだ。
それは時に痛く、苦しく、孤独でもある。でも、それはみんな同じなのだ。みんな同じように感じている。
店主三浦も笑って言う。
ぜひ、もがき苦しみながら書いてください、と。
川代ノートでおなじみのスタッフ川代も、たくさんもがき苦しみながら書いているという記事がいくつもある。

お客様だってそうだ。
ネタ切れや、自分の得意分野が見つからないなど、様々な悩みを抱えながらも、この場所に通っている。
それは、まだお客さんだった期間の方が長い私もよく分かる。
ここに来れば、超絶面白い記事を書く人達に会える。努力し、成果を発揮する仲間に対し、自分の甘さに気づくことができる。
そうなのだ。天狼院書店は、切磋琢磨するには、最高の場所なのである。
思えば、いい大人になって、こんなに真正面からケチョンケチョンに言われることなんてめったに無い。店とお客の関係性を保とうとするならば、甘い言葉しか使わなくなるはずなのに、天狼院書店は違う。真正面から本気でぶつかってくる。おかげで、私は自分自身を本気で見つめざるを得なくなる。言い訳も何もできない実力主義。文章を書ける人がいて、まだまだな自分がいる。そのことを自分で受け止めなければならないのだ。そこからがプロへの道になるのだと思う。
でも、この循環があるからこそ、私は高校時代から持つ夢や目標を今も、持ち続けられているのかもしれない。
諦めたらそこで終わりなのだ。でも、天狼院書店にいれば、嫌でも努力しよう、夢を実現しようと不思議と思える。
それは、そうやって頑張る仲間が大勢いるからだ。顔も名前も知らなくても、その人の文章を見れば分かる。心動かされる文章で、一発だ。

これからも、たくさん悔しい思いをすることだろう。
でも、その分成長できるはずだ。成長には痛みがつきものなのだから。高校時代はそれこそ部活動で、きつい思いや悔しい思いをし、何度も涙を流した。私は、舞台の世界だったけれど、高校野球などのスポーツなど、あらゆる分野でそれは言えることだろう。でも、年齢が上がるにつれ、厳しいことも甘いことも、何も言われなくなった。他人なのだから当然のことなのかもしれない。自分に全く関係のない人に興味関心を持つことのほうが難しい。よっぽど正義感が強い人でなければ、その人のために自分を犠牲にしてまで何かしようなど思えないのだ。全ては自己責任なのだから、知らない人がどうなろうと関係ない。でも、極稀に大人になっても、痛みに向き合い続ける人間臭くてかっこいい人たちの集まる場所がある。私はその試練を乗り越えるために、この場所で書き続けているのだと思う。みんなは、悔しいだの、あーだこうだ口にはしないけれど、こんな想いを抱いているのは、私だけなんかじゃないと、そう思う。

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