チーム天狼院

大学の先は地獄だと思っていた


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記事:秋田珠希(チーム天狼院)

「大学卒業するのって、死ぬのと一緒だよね」
「あ、それわかる」
授業が始まる前の教室で、昼食を食べていた時だった。
私たちは大学三年生で、そろそろ夏のインターンシップを申し込む時期が来ていた。
1、2年の頃は、大学内で4年生らしきリクルートスーツ姿を見て、大変そうだなあと思っていた。
そんなのんきな時期は終わった。そろそろ他人事では済まなくなっている。
「結局さ、どこの地獄を選ぶかってことなんだよ」
隣の友人がため息まじりに言った。

今まで、私は勉強と部活しかして来なかった。
もちろん外部で活動していたこともあったが、本職は学生だった。ほとんどの大学生と同じように。
大学は、今までの生活の延長線上にある。
バイトばかりという人もいるし、サークルや部活が生活の中心という人も多い。だから大学生活はモラトリアムだという声も聞くが、本来なら学問を学びに来るところだ。
自由度は高いけど、面倒は見てもらえる。
というか、見てもらわないと困る。私たちは学生だから。
だから安心していられた。
“まだ”私たちは学生なのだと。
ある程度好き勝手やれる。20歳超えたとはいえ、まだ子供だから。
それが、学生じゃ無くなる。
今までなら、小学校、中学校、高校、大学、というレールはあった。
私は「なんで大学に行くのか」「何がしたいのか」は高校時代に考えていたけれど、それでも結局大学に行くんだろうとどこか安心していられた。
やっぱり大学に行くのが一般的なルートだったし、その選択肢が一番イメージできたから。
大学入ったらこうしよう、ああしようと想像できた。希望を持って想像できる範囲だったのだ。

でも就活は、何もない。

想像できない。というか、そもそもステレオタイプがない。
サラリーマンにOL、フリーランス、ノマドワークス、などなど働き方が多様になってきているだけに、混乱が増す。
とりあえず何かを選ばなくてはと思うけど、何がいいのかよく分からない。一応学生が本職だった人である。世間知らずもいいところだ。ビジネスのことも聞いたことがあるけれど、具体的にイメージするまで至らない。
何が良くて何が悪いなんてものもない。人それぞれ適した働き方は違う。
大学受験で最終判断基準だった、偏差値も働き方には存在しない。
深い沼に投げ出されたように、足場が見えない。
大学を卒業してからの想像がつかないのだ。

それなのに自分の全人生が、自分の肩にかかってくる。
生活費を稼がねば生きていけない。今までのように、風邪をひいて休んだら体調管理ができていないと怒られる。行きたくなくても行かなくてはならない。
そこへ追い打ちをかけるように、ブラック企業の噂なんかが飛び込んでくる。
ネットで飛び交うブラック企業の噂は、もう社会は厳しいというレベルでは済まされないほどきつくて苦しい生活が待っているように思わされる。

想像がつかないが何やら仕事は大変で、でも生活費を稼ぐために働かなくてはならない。

何これ、地獄じゃん。

そう思うのも無理はない。
想像もできない苦しい世界に行くこと。死んで地獄に行くことそのものだ。

でも、さらに不思議な話もある。
私が会った社会人は、なぜだか楽しいというのだ。
これだけ働くことに対する嫌なイメージが頭の中に染みついているというのに、働いている人が楽しそうなんて、どうしたって違和感を持つ。
まさか洗脳まで行ってしまったんだろうか。
そう思って聞いたことがある。
「仕事って何が楽しいんですか?」
ここまで直接的なではないけど、だいたいこんな感じの聞き方をした。
相手は大学を卒業して、そのままフリーランスになった人だった。
ここまで書いてきた働くことに対する不安や拒否感を散々言った上で聞いた。
なんでそんなに働くって楽しいよって言えるのか。
なんでそんなにこれから希望があるみたいな言い方をするのか。
こっちは大学生のタイムリミット、すなわち寿命が近づいて困っているのに。
その人はこう答えた。

「やっぱり自分がやったことで誰かが喜んでくれるって嬉しいよ。自分がやったことがお金になって返ってくるし、学生の時よりも自由かもしれない」

わ、と思った。
そうか。自由。

今までずっと、仕事を始めたら責任感を持たなくてはいけない上、型に押し込められるだけだと思っていた。
でも責任と引き換えに得られる自由というのは、確かに、ある。
自分が誰かのためになっていると思える上、金銭的な自由も手に入る。
それが自分に合った場所で働いているなら、なおさら楽しい。
私の周りの社会人は、居場所が見つかった人たちだったのだろう。
今から私は、それを選ぶのだ。誰に何を提供したいか。どんな責任を持ちたいか。

大学の先。
私たちはそこに、少しの希望を抱いてもいいのかもしれない。

***

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