【募集中】見せることがこんなに快感だったなんて《大学生限定/『月刊天狼院書店』編集部員募集》
天狼院のアルバイトとして入った日、店主の三浦さんに課せられたのは、あまりにもハードルが高すぎるミッションだった。
「海鈴、さっそく自己紹介の記事、書いてみてよ!」
うそだろ、勘弁してくれ、と思った。
「え、自己紹介って……どんなこと書けばいいんですかね?」
「なんでもいいよ。海鈴に任せる。おもしろければオッケー!」
おもしろければ、なんてまた、さも簡単なことのように言う。
自分が書いた文章を人に見せることは、顔から火が出るほど、穴があったら入りたくなってしまうほど、私にとっていっちばん恥ずかしいことだったのだ。
小さいころから目立ちたがり屋なくせに、いつも変な部分で恥ずかしがり屋だった。
小学校高学年で少年ジャンプにハマっていたときは、コンビニの定員さんに
「この子、毎週ジャンプ買いに来てる、女子なのに(笑)」
と思われるのが嫌で、毎回コンビニを変えて買っていた。家からいちばん近くのコンビニに行けばいいものを、わざわざ遠回りして別の店に行くほどだった。
初版にのみ特典がついてくる人気のコミックがどうしても欲しかったときは、
「あ、この子、こういうの好きなんだ。ふーん(笑)」
と思われるのが嫌で、書店に着いたはいいが、なかなか店員さんに予約の申し出をすることができず、ずっと店内をうろうろしていた。
店員どころか周りの一般客にすら
「あー、いま人気のアレ予約してるのね(笑)」
と思われるのが嫌で、レジ周りに人がいなくなる絶妙のタイミングを見計らって、内心最高にドキドキしながら予約をしに行っていたほどだったのだ。
文章を書くのは、好きな方だった。
読書感想文の宿題が出る夏休みには、机にかじりついて、本を読んだときに感じた感情を深掘りしていくのが好きだった。
かろうじて言語化できた感情は、氷山の一角にしか過ぎなかったけれど、じゃあどう表現すればほんとうに私が言いたいことにいちばん近づけるのか、うんうん唸りながら見つけていくのが好きだった。
けど、厄介だったのが、感想文を先生に提出しなければならないことだ。
「この子、こういうこと考えてるんだー」
と先生に思われるのが恥ずかしくて恥ずかしくて、しょうがなかった。
全員の作文が掲載される、学年文集なんか最悪だ。
否応なしに、あの辱めを受けさせられるのは、何の罰ゲームだとさえ当時思っていた。
書いているときは、なんか変なアドレナリンが出てるのかハイになって、ふだん口に出して言えないような大それたことだって出てきてしまう。
どうしても締め切りがあるから、アドレナリンに任せてとりあえず出てきた言葉で原稿用紙を埋めて提出するけれど、あとになって、私なんであんな世界を救うには愛が必要だ、みたいな正義のヒーローぶったこと書いちゃってんの! 誰様! ばかみたい! と一気に羞恥心がこみ上げてくる。
文章を書きながら、私はいつも新しい自分を発見してしまう。
自分のことは、自分がいちばん分かっていたつもりなのに、書けば書くほど、それまで思ってもいなかったようなことが明るみに出てくる。前向きなことも、めちゃくちゃ暗いことも。
こんなの私のキャラじゃないだろ、という気持ちが先立って、消しゴムをかけてしまうことがたくさんあった。
自分がふだん隠している感情まで、人に見せることは、まるで真っ裸をさらすようなものだと思っていた。
だから、本気で焦った。
私が書いた文章が、そのままネットに載るなんて。
これだったら裸をさらしたほうがまだマシだ、いややっぱりそんなことはないけれど、実名でしかも自己紹介の記事なんて、とんだ恥ずかしさの極みだ。
しかも、すでに天狼院のページには、おもしろい記事の精鋭たちが顔をそろえていた。
なんだこれ。こんな中で、戦えというのか。右からモデルさん、モデルさん、モデルさん、私じゃがいも、みたいな公開処刑じゃないか。
無理、無理。
ゼッタイ、無理だよ。
あはは、と三浦さんは笑う。
「とにかく、書いてみること。そうしたら、わかるよ」
やるしかなかった。必死の思いで、文章をつむぎ出した。夜までかかって、結局そのまま寝てしまって、朝になった。
学校の授業もそっちのけで、パソコンの画面をたたいた。ああでもない、こうでもないと消しては書き、消しては書きの繰り返しで、やっと、ひとつの記事ができあがった。ずっと、そのことばかり考えていた。
書きながら、私は文章を人に見せることの何が今まで嫌だったのだろうと考えた。
ずっと、一般で言われている「正しいレール」に乗って進むことが良しと思って過ごしてきた。
「いい子ちゃん」の範疇内にいることが、私のステータスだった。
自分の考えを本気で出すことは、それとは真逆の位置にある。よこしまなことだってたくさん考えているのに、ほんとうの考えを言ってしまえば、変な人だって、思われるんじゃないか。みんな離れていくんじゃないか。みんな私のこと、見損なうんじゃないか。できるだけ人の心に波風を立てないように、めんどくさいことにならないように。私のことで、下手なフラグが立ってしまわないように。だって私は「いい子ちゃん」だから。そういうキャラだから。
「キャラ」という絶好の隠れ蓑に身をひそめながら、私は、周りの目におびえていたのだ。「いい子ちゃん」のふりをして、なんでもない風を装っていたけれど、ほんとうは小動物みたいにぶるぶる震えながら、きゅうくつに生きてきた。
そうだ、今までずっと、とっても、きゅうくつだった。そのことに、はじめて気づいた。
できあがった文章を見せると、三浦さんは、いいんじゃない、とニヤリと笑った。
記事をアップする瞬間、心臓の鼓動がいつもの何倍にもなって、身体中に響きわたっていた。
そこには、緊張だけではなく、紛れもなく別の感情が入り混じっていた。
あれだけ自分の文章を人に見せるのが恥ずかしかった自分が、まさかそんなことを感じ取るとは、思いもしなかった。
トップページにアップされた記事を見た瞬間にこみ上げてきたもの。
それは、「快感」以外の何物でもなかった。
知らなかった。見られることは、こんなにも、快感だったなんて。
あちゃー、変なものに目覚めてしまったな、と思った。
書くことで、まるで、自由に大空を飛びまわれる翼が生えたようだった。
天狼院は、まぎれもなく、その翼を与えてくれた場所だった。
きゅうくつを感じて過ごすことも、もうほとんどなくなった。
学生のうちにこの翼を手にできたことは、財産だと思っている。
天狼院で、いよいよ学生にとっての夢の部活「読み部」がはじまる。
本を読んで、文章に起こして、お金がもらえる。
え、そんなこと、ほんとうにいいの? と耳を疑いたくなるだろうが、実際私もこれに参加しなければ本好きとして、うそだと思う。
自分が書いた言葉を、多くの人にみてもらえるのだ。好きな本を、好きなように語って、それを誰かと共有できて。
「あの記事、見ましたよ」
と声をかけられるだけでも嬉しいのに、
「記事を読んで、影響されて。僕も一人旅、この前行ってきたんです」
なんて言われようものなら、もうノックアウトだ。
最初はあれだけ公開するのが恥ずかしかった自分の文章が人に何かしらの影響を与えていることに、感動さえ覚えてしまう。
どれだけ頭を抱えて文章を生み出したとしても、苦労がぜんぶ吹っ飛んでしまう。あれだけ怖かったことなのに、ちゃんと書いてみてよかったなと、思ってしまう。
書くことは、快感なのだ。
もしもあなたが、人に文章を見せるのがどれだけ恥ずかしいと思っているとしても。
一度あの味を覚えてしまったら、もう忘れられない。
なかなか、あの味を超える快感を、血の煮えたぎる瞬間を、私はまだ見つけられない。
少しでも心感じるものがあるのなら、学生のうちに、この機会にぜひ飛び込んできてほしいと思う。
自分の文章がトップページに掲載される瞬間の、雲の上にいるようなふわふわとした高揚感を、自分の記事が多くの人に読まれているときの、脳内麻薬がバシバシ出まくるあの強烈な刺激を、共有したいと思う。
そして、天狼院から一人、また一人と、自由に飛び回れる翼をもって、みんなで高く舞い上がりたいと思っている。
言っときますけど、これ、ほんとですよ。
「月刊天狼院書店」編集部、通称「読み部」。
学生の皆さまのご参加を、ぜひ、お待ちしております。
天狼院書店スタッフ 海鈴
【「読み人」募集要項】
天狼院書店店主の三浦でございます。
発端は、およそ二年前のことでした。
「本を読んで、お金をもらえる仕事があったらいいよね?」
ふと、あるアイデアが頭に浮かび、スタッフにこう言っていました。
生まれて、これまで、本にどれくらい投資してきたかわかりません。
かなりの額が費やされたろうと思います。
もし、本を読んで、たとえば、その本の代金分だけでもお金がもらえるという「夢の仕事」があったら、どうでしょう。
僕だったら、間違いなく入ります。
そんな「夢の仕事」を作ることができないかと、この二年間、事ある毎に考えてきました。
また、様々な方法論を考えました。
昨年末より、その動きが本格的になり、いよいよ、組織としてそれを立ち上げることに決めました。
その「夢の部活」こそが、
「月刊天狼院書店」編集部、通称「読み部」です。
いうなれば、
「本好きの、本好きによる、本好きのための部活」。
天狼院の定義としては、単に本を「読む(リーディング)」だけでは、読書はまだ不完全なんですね。
読んだ後に「書く(ライティング)」ことによって、はじめて読書が完結すると考えます。
まるで「タンポポの種」のように、読んでふわふわと頭の表層を浮遊しているものを、書くことによって地面に定着させる。
そうすることによって、はじめて、種は根づき、やがて実がなると思うんです。
そんな本質的な読書を、楽しみながらやるのが、「月刊天狼院書店」編集部、通称「読み部」です。
今回、そこで本を読むためのスタッフ「読み人(よみびと)」を、大募集することにいたしました。
大学生限定とさせていただきます。
やっていただくのは、天狼院の定義する「読書」です。
つまり、読んで、書いてもらいます。
それで、書いた記事が優れていると天狼院が判断した場合、Web天狼院書店の、今用意している新しいメディアに掲載し、その掲載料として、読んだ本の金額(1記事上限2,000円)を支給いたします。
「え? 本を読むのは好きだけど、書けるかな?」
とお思いの皆様、心・配・御・無・用でございます。
読んで書くための「リーディング・ハイ」ライティング講座(通常1回¥5,000)を用意しております。
スタッフ「読み人」の皆様には、これを無料で受講していただけます。
さらに、毎週日曜日朝に開催している天狼院の大人気読書会「ファナティック読書会」(通常1回¥1,000+1オーダー)にも、無料で参加できます。
さらにさらには、本屋をまるごと編集してしまう、おそらく世界の書店史上初めての試み「月刊天狼院書店」編集部に、編集者として参加できます。なんと、その参加費も無料です。
好きな本を読み、
それがWeb天狼院書店というメディアに掲載され、
プロに文章の書き方も教わることができ、
お客様と大好きな本について「熱狂的(ファナティック)」に語り合うファナティック読書会に参加でき、
さらには、今人気の書店の「編集」にも携わることができる。
しかも、掲載された分の本の代金が支払われる。
どうでしょう、これが天狼院が提示する「夢の部活」です。
僕の悲願です。
おそらく、応募が殺到すると思いますので、エントリー方式にしたいと思います。
お早めにご応募ください。
Web天狼院書店の「お問い合せ」フォームからご応募ください。
こちらから→ お問い合せフォーム
「題名」の欄には「読み人募集への応募」と記入ください。
「メッセージ本文」には、以下の項目を記入ください。
①履歴書に相当する記述
②応募動機
③課題文「自分が最も好きな本を一人でも多くの人に読んでもらうための文章(2,000字程度)」
選考後、一次審査を通過した方にのみ、担当者より、説明会への招待メールをお送りします。
その後、店主の面接を経て、正式に参加となります。
それでは、一人でも多くの、優れた「読み人」の皆様のご応募、お待ちしております。
お友達もお誘い合わせの上、ぜひ、チャンレジしてみてください。
どうぞよろしくお願いします。
【要項】
条件:大学生(大学院生)
読む時間帯場所:好きなときに、いつでも、どこででも
書く時間帯場所:好きなときに、いつでも、どこででも
ファナティック読書会:毎週日曜日朝9:00
「月刊天狼院書店」編集部:第1・3日曜日11:30〜13:30
*「ファナティック読書会」や「月刊天狼院書店」編集部が開催される毎週日曜日午前中〜昼の時間帯を空けられる方を優先します。
募集地域:東京天狼院(池袋)/福岡天狼院(福岡天神)に通える距離
*本部活のメンバーは、天狼院の正式なアルバイトスタッフが募集される場合、選考にて優遇されます。
*正式なスタッフではないので、対象となるイベント以外の天狼院のイベントには、無料で参加することはできません。
【天狼院書店へのお問い合わせ】
TEL:03-6914-3618
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