【京都天狼院通信Vol8:私が天狼院に来た理由】
*この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いたものです。
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記事:池田瑠里子(チーム天狼院)
「どうして、星野リゾートを辞めて、全く畑違いの天狼院に?!」
その言葉を、天狼院に入社してこの1年で、何度聞いたかわかりません。
新入社員で入社して6年、開業でのフロント立ち上げや、組織の中のプチリーダーを務めたりもして、
やりがいを感じていた星野リゾートを辞めるということは、私自身もどうすべきか、本当に悩んだことでもありました。
さらに転職先は、自分が社会人になってから全く畑違いの、書店業。
本当に大丈夫かと思わなかったかと言ったら、内心、本当にビクビクの選択でした。
星野を辞めて後悔しないだろうか?
私がちゃんと、天狼院書店という新業態の中で、戦っていけるのだろうか?
でもそれでも、そんな自分の弱音を封じて、意を決して天狼院書店にきたこと。
最後の最後の決め手は、「私にとって本が何よりも大切なものだったから」に他なりません。
皆さんにとって、本はどんな存在でしょうか。
ほとんど読まない、最近ご無沙汰……。
本を読むことなんて、今までほとんどしてこなかった。
そんな方も多いかもしれません。
私にとって、本は、誰よりも気心しれた友達です。
物心ついた時から、本は「友達」として、身近にいつでもそばにいる存在でした。
両親も読書家だったこともあり、子供の頃から母は毎日のように私に絵本を読み聞かせてくれていました。
ぐりとぐら、三匹のやぎのがらがらどん、天の釘を打ちに行ったはりっこ……。
外で遊ぶのも大好きだったけれど、
気がついたら私の周りでは、本から飛び出した空想上の友達でいっぱいに。
むしろ、本が友達だったからこそ、外で遊ぶのが好きになって、
周りの世界の多くのものが「友達」になれたようにも思います。
「ほたるホテル」といシリーズの絵本(ほたるが経営するホテルにたくさん虫とか小さい生き物が来るというほんわかした絵本)を読んでから、
ちょっと嫌だなと思っていた虫やかたつむりたちが、可愛らしい存在に思えてきたり。
ワイルドの「しあわせな王子」にとても感動して、石像を見たらまるで生きているように感じたり。
今でも私は道端の花や、家にいるハエトリグモ、道のお地蔵さんや神社の狛犬たちが大好きだし、
生きているように本心から思いますが、
そんな大人に今なれたのも、本が、橋渡しをしてくれたから。
少し大きくなったときに、漢字がたくさん入った『雪の女王』の絵本を、父が買ってきた夜のことは忘れられません。
バーナデット・ワッツが描いたその『雪の女王』の絵本は本当に美しくて、そして漢字がいっぱいの綺麗な絵本を買ってもらえるくらいお姉さんになったような気がして、
あまりの嬉しさにその本を枕元に置いて寝たことを、今でも鮮明に覚えています。
そんな風に、小さい頃から絵本が友達だったから、
大きくなっても、大人になっても本を読む習慣は、消えることはなく。
むしろ、もっともっと近い存在として、私を支えてくれる存在へと変わってきたなと思います。
現実の友達や恋人とは、時には疎遠になってしまったり、会わなくなったり、喧嘩したり、
逆にすごく近づいたり、……本当にいろいろなことがあります。
それはそれで素晴らしいこと。
でも、本という存在は、そういったリアルな人間たちとはまた違った、
どんな時でも私のそばにいて、支えてくれたり、一緒に笑ってくれたり、泣いてくれたりする存在でした。
思い返すと、前職の時もそうでした。
初めて仕事をするホテル業は、慣れなくて辛いことも多く、何度も投げ出したい、辞めたい、そう思うことが多かったことも事実です。
そんな風に心が折れそうになったときに、私の心を支えてくれたのは、周りの仲間たちはもちろん、その時々、「本」の存在も大きかったのです。
村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』。何度この本を読み返したかわかりません。
弱く打ちひしがられそうな私自身の心を、「まだまだそんな甘えてちゃダメだ!」と奮い立たせてくれるエネルギーの強さに、倒れそうになるたび、助けられてきたなと思います。
『調理場という戦場』。この本に出会ったのも、私自身にとっては大きな糧となりました。仕事をする上での大切なことを思い出させてくれるこの本は、読むことで初心を思い出させてくれた、大切な本です。
今私の家では、玄関にも部屋にも、そこかしこに本は溢れています。
その背表紙ひとつひとつが、私自身を支えてくれ、そばにいてくれ、時には新しい世界を見せてくれる、愛おしい存在です。
私の周りでは、本を読まない人が増えてきているけれど。
でも私にとっては、本がなかったら、もしかしたら生きて来れなかったかもしれないし、
本があったからこそ、ここまで心が豊かな生活をしてこれた(してきたと信じたい!)のだと思います。
観光業に携わる日々も、とっても楽しい毎日でした。
今でも私は前職が大好きな場所で、いつでも戻りたいと思います。
それでも、私はやっぱり、本のもっともっと近くにいたい、と思ったのです。
私にとって、天狼院にきたことは、今まで私を助けてくれた本への恩返しでもあります。
私自身がどこまで、これから素敵な本たちをみなさまにお知らせして、お届けできるかわかりませんが。
少しでも、みなさんと本の出会いの橋渡しをしたい。
今日もお店に立ちながら、そんなことを思っています。
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