チーム天狼院

「長女だもんね〜」はもうやめてくれ《海鈴のアイデアクリップ》


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「やっぱり、長女だよね〜」

知らんが、そう言われることは少なくない。

みんなが好きな性格分析とか、分類の話になると、診断のあとに「それって、やっぱ長女だからっていうのが関係してるのかな?」とか言われる。

もうやめてくれ!
私だってなりたくて長女になったわけじゃないわ!

 

初めての海外旅行に、団体で行ったときだってそうだ。

女子ばかり6人での長旅。
あちこち街を歩き回り、はー、疲れたー、とホテルに帰ってきたところで、重要な事態に気付いてしまった。

次の日の交通機関の使い方を、まったく調べていない状態だったのだ。

郊外のショッピングモールへ遠出の予定で、どうやら、バスや地下鉄を乗り継いて行くらしいということはぼんやりと分かっていたが、何せ、初めての海外旅行だ。

交通機関の乗り方すらもままなっていないのに、ましてや、バスを使わないといけないなんて!
日本でもバスの乗り継ぎは上手くいくか怪しいのに、海外でのバスの乗り換えなんて!

不安すぎた。
本音をいうとめちゃくちゃ疲れていたが、バスを使わなければならない恐怖の方が勝っていた。

何時にホテルを出て、どのバスに乗るのか、
いつショッピングモールに着けば、じゅうぶん買い物時間が確保できるか、
ちゃんと日が暮れる前に都心に戻ってこれるかーーー

旅のスケジュールとは、調べだすとどうしてこんなにも時間がかかるのだ?

私はだんだんイライラしてきていた。

そのイライラは、行程を調べるのがあまりにも進まなさすぎるから、という理由だけではなかった。

この旅は、全部で6人だったはずだ。

なのに、だ。
その時スマホの画面とにらみ合いっこをしながらウンウン唸っていたのは、私だけだったのだ。

他のメンバーはというと、同じようにスマホの画面にかじりついていた。

外面から見れば何も代わり映えはない光景。
だが、決定的な違いがあった。

みんな、何も次の日の交通機関を調べていたわけではない。当時流行っていた携帯ゲーム「アングリーバード」を、延々とプレイし続けていたのだ!
それも、私が一人で明日の旅行行程を考えていることを知りながら!!!

最初は、まあもうちょっとしたらゲームにも飽きて調べるのを手伝ってくれるだろうとどこか期待していた。

だが、メンバーは一向にスマホを手放そうとしなかった。
アングリーバードの「YAHHHHHHHHHH」とか「ぴえーーーーーー」とかいう間抜けな音が部屋に響きわたりつづけた。

私は思わず、
 

みんな疲れていてゆっくりしたいのは同じなのにどうして私だけ調べてるんだていうかそもそも郊外のショッピングモールに行きたいって言ったの私じゃねえし何故私が調べてるんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

 

……と、叫びだしたくなりそうな気持ちをぐっとこらえて、ひたすらスマホの画面とにらみ合っていた。

ほんとはゆっくりしたいよ。ていうかもう寝たいよ、ゲームしたいよ!
でも私がやんなかったらどうせ他にやる人いないでしょ、もういいよ!!

もはや諦観だった。私は結局一人で、次の日の行程をすべて調べ上げた。

 

今でこそ笑い話になっているが、当時の私は、かなり、はらわた煮えくり返っていたのだ。

いつだってそうだ。
別に私がやらなければ誰かがやってくれることだろうに、どうしても、「人にやってもらう」側に行くことができない。

甘え上手で、うまい具合に手を抜いてひょひょいと世をわたっていく人を見ると、ははー、お見それいたしました、となる。
自分ひとりでできることなんて、高が知れている。人の手を借りた方が圧倒的に効率がよいのだ。

それなのに長女は、あまりにも自らの手で未開の地を開拓しすぎた。

それ以外の方法を、知らないのだ。

「やっぱり、長女だよね〜」

とか、本当はやめてほしい。

長女は「長女」に縛られすぎているのだ。
もっと自分の好きなように生きたいと、本当は思っているのだ。それが苦手なだけなのだ!

 

……けど、けれども。

「やっぱり、長女だよね〜」

とか言われると、

「そう? やっぱ、私って、長女だからね〜」

と思わずにはいられないのも、事実なのだ。

やめたいのに、やっぱり長女は「長女」であることに誇りを持っているらしい。

あれだけ、はらわた煮えくり返っていたはずなのに、日が経つとそんなこともケロリと忘れて、

「いやー、私、偉かったよねあの時! やっぱり私、長女だよね〜」

とか自分で言い出すほどの、調子のいい生き物なのだ。

 

嫌よ嫌よも好きのうち。

長女とは、自ら手のかかる物事に首を突っ込んでおきながら、その役周りにウンザリしつつも、一方で人に褒められると鼻高々と振る舞う、ひじょーにメンドクサイ生き物なのである。

長女サイコー。

 

Photo©Lara Cores

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