【平日には読まないで!】京大院生書店スタッフが本気で選んだ、「これ読み始めると理性が吹っ飛ぶんだよぉぉぉ」と思う長編小説ベスト7 《リーディング・ハイ》
本当に面白い物語に出会うと、人は理性が吹っ飛びます。
京都スタッフ三宅です、こんにちは。
あなたが触れてきた物語の中で、一番面白いものはなんですか?
私の場合、数えきれないのですが、そこにはある共通項があります。
それは、読み始めると理性が吹っ飛ぶということ。
もうね、獣ですよ獣。
私は本の獣になります。
目が本から離れなくて、何か邪魔が入ろうものなら本能的に殺意を覚えますね。
面白い物語って、人を狂暴にさせるんですよ。
ページをめくる手が止まらない。誰も私を止められない。
そこには物語の世界に飢える自分がいるだけです……。
あなおそろしき本の沼。
そんな体験したくないよって方は全然しなくて構わないと思うんですが、ちょっとでも興味のある方がいたら、ぜひこの本たちをおすすめします。
ご紹介する本たちの共通項は、「長い」こと。
なぜ物語がそこまで長いのか?
それは、長く読者を惹きつけるだけの、ちょっと尋常じゃない面白さが存在したから。
真の長編小説は、あなたの本能を呼び覚ますことと思います。
学生さんは夏休みでしょうし、社会人の方々もお盆休みがあることと思います。
徹夜必須の面白い長編小説たちは、平日に読んじゃいけません。
あなたが休みの日を徹夜して費やすに値する、死ぬほど面白い物語が入ってますように!
***
1.『モンテ・クリスト伯(1)~(7)』(アレクサンドル・デュマ、岩波文庫)
この特集はこの長い物語を紹介したくてつくったよーなもんです。恐ろしいほど面白かった。止められなかった。あー学生でよかった……!
世界で最も有名な復讐劇であるこのお話は、ラブあり・アクションあり・家族愛あり・そして最後は宗教的な話まで入ってしまうという……ハリウッド映画もびっくりするほど色んな要素が詰め込まれているんです!! 古典作品というと「場面の描写が細かすぎて挫折する」ことがありますが、この小説に限っては、本当に物語の展開スピードが速い!
あと、私はこの主人公がめっちゃ好きなんですよ~~~~かっこよすぎる~~~~。
復讐に燃える主人公、果たしてハッピーエンドはありえるのか? 読んでからのお楽しみです!
2.『国盗り物語 (上)(中)(下)』(司馬遼太郎、新潮文庫)
昔、この本読み終わらなくて丸一日講義サボったんですよね……(何やってんだ) 一応ちゃんと講義に行こうとして、講義室の手前のベンチで読んで、結局講義室に入らなかったという思い出……同級生に不審な目で見られました。
それくらい読みだしたら止まらない本なんですよ! 司馬先生の徹夜本といえば『坂の上の雲』『竜馬がいく』を挙げる人が多いのですが、私的にはもう、この本が一番止まらなかったです。戦国時代が舞台なのですが、主人公が巻によって変わるので、余計に飽きないのだと思います。
3.『蒼穹の昴 (1)~(4)』(浅田次郎、講談社文庫)
徹夜で読むといったらこれですよ!!! 浅田次郎は本当にどれを読んでも読みやすくて目が勝手に文章を追っかけるのですが、この小説はほんとに、止まらない。
清朝末期を舞台に繰り広げられるビルディングスロマンなのですが、主人公が走り続ける姿に私はいつもエネルギーをもらいます。日本を舞台にした物語よりもぐんとスケールが大きく感じられるのは、中国という大陸に依ったところが大きいのでしょう。
―――その気になれば、運命は、変えられる。現状にため息をつく前に、この物語を読んだほうがエネルギーもらえますよ!
4.『ソロモンの偽証 (全六巻)』(宮部みゆき、新潮文庫)
宮部みゆきは、日本一「ページをめくらせる」作家だと思ってるんですよ、私。
なんていうかこう、「続きが予想できない、どうなっちゃうんだろう」と思って読んじゃうというよりも、「とにかく次のページに行きたい」と思わせる作家なんです!! ミステリとしての斬新さとかトリックの重厚さとかよりも、その「とにかくページをめくってしまう」という点で宮部みゆきはやっぱり、すごい。
だからこそこの長編も読ませてしまう。ひとりひとりの心情を緻密に描写し、教室のひとりひとりに違った感情があることを思い出させてくれる作品です。映画よりもやっぱり、原作を全力でおすすめします!
5.『バートン版 千夜一夜物語 (1)~(11)』(大場正史(訳)、ちくま文庫)
この本だけは、一気読みをおすすめしません。夏の夜、浸ってちびちび読んで欲しい本。まるで寝る前に一杯ワインを味わうように。
いろんなお伽話(アラジンとかシンドバッドとか有名ですよね)が語られる本書ですが、私は最初に出てくるシャーラザッド姫が大好きで。
どういう姫かといいますと……ある国に処女を抱いては殺すことを繰り返している王様がいるんですが、このシャーラザット姫だけが、毎晩殺されずに帰ってくるんですね。なぜかって、毎晩王様のベッドでめっちゃ面白い話をして「続きはまた明日~」と言うもんだから、王様は続きが気になって殺せないよ! というワケなのです。そこで語られたお話がこの「千夜一夜物語(千夜に渡って語られたお話)」なんですね。
しかもこのお話が、なんとも、官能的。アラビアのお姫様が夜に語る、ひっそりとエロいお話。この夏は、あなたもシャーラザット姫の語りに耳を傾けてみませんか?
※ご一緒に「アラビアンナイトを楽しむために」(阿刀田高、新潮文庫)もおすすめです!
6.「グイン・サーガ」シリーズ(全138巻) (一巻:『豹頭の仮面―グイン・サーガ(1)』)(栗本薫、ハヤカワ文庫JA)
最初に言っておきますと、このシリーズ、ハマらない方がいいですよ!!!!!!!
や、じゃあおすすめするなって話ですけど。でもね、ほんとにね、面白すぎるんですもんっ……。こんな面白いファンタジー大河ないですよ、本当に……。
長編小説というとどうしてもマクロの動き(社会全体とか世界とか)が強く押し出されるんですが、この小説のすごいところは、ちゃんとミクロ(心情の変化ですね)が繊細に描かれているところ。主人公たちが自分のトラウマや悲しみを抱えながら、それを乗り越えてゆく様が描かれているのがとてもいい。運命と戦う人間を描いたこの物語が、私は大好きです。
7.『IT (1)~(4)』(スティーブン・キング、文春文庫)
子ども時代って、あらゆるところに怖さを感じてた気がする。一人で留守番した夜、夕暮れの帰り道、誰もいないお墓。そこにたしかに「何か」の気配を感じてた。そしてそれはきっと今も、感じないようにしてるだけで、心のどこかに残ってるんだと思う。……そんな子ども時代の恐怖を描いたら、キングの右に出るものは、この世にいない。
少年時代の、痛みと幸福。私はキングの文章を読むと、いつだって、子どもだった夏を思い出します。ホラーといえばホラーなんですが、その裏に、キングはいつも少年時代の痛みを隠します。
痛みのない成長は存在しない。大人になって忘れかけてたことを、どこかで思い出す物語です。
***
面白すぎる物語を読んでて、「あっまだ続きがめっちゃある!」と思うときの、嬉しさともどかしさって何なんでしょうね。
早く最後まで行き着きたいんだけど、行き着いてほしくない。
長い物語を読んでる時の、あの感覚が私は大好きです。
まずは一巻からでも、物語の扉を開けてみることをおすすめ致します!
きっと毎日が楽しくなりますこと請け負いです。
「今日帰ったらあれが読める~」と思うときの幸せったらない!
大人の方は、ぜひ一気買いしてみてくださいませ(笑)
それではみなさん、よき夏休みを!
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