「お前なんて15点だ」と言われたかった夜のこと《深夜3時の処方箋#2》
*この記事は、「ライティング・ゼミ」で文章の書き方を学んだスタッフが書いたものです。
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「そうですね、んー今日は23点ってとこでしょうか」
できれば聞かれたくない質問に、渋々といった感じで私は答えた。
「23点? そりゃちょっと低すぎやしないか?」
大先輩の言葉に、私は反論できずにいた。自分でもわかっている、わかっているのだけど、どうしても楽観的な点数をつけることができない。もちろん、自分も見てくれた人も100点だと言い切れるパフォーマンスをするのが理想だけど、そんな経験は残念ながら今までに1度もない。
その日は久しぶりに、福岡では実に7ヶ月ぶりのライブの日だった。インディーズアーティストとして、活動を始めてから3年ほどになるが、私が歌い始めた当初からお世話になっているイベントに呼ばれていた。他の出演者の方は、皆10年近く、いやもっとキャリアのある方々が名を連ねる中、なぜか私がトリにさせられてしまった。
しかも、その日は新しい試みで曲紹介の代わりに一つお話を読むことにしていた。せっかく天狼院に通って少しは上達したと思われるライティングスキルを、どうにか自分のステージにも生かしていきたいと思ったのだ。
そんなチャレンジと、久しぶりのライブということもあり、舞台袖での緊張は半端ではなかった。
「逃げ出したい」
いつも本番前は弱気になる。なんでこのライブ受けちゃったんだろうとか、やっぱりあの曲は自信ないからセットリスト戻したいとか、お客さんがすぐそこで待っていてくれているというのに、その状況から逃げたくなってしまうのだ。
そしてその緊張を噛み砕いて自分のエネルギーに変換できる日と、そうでない日の差が激しい。
結論から言えば、この日は緊張とやらを上手いこと咀嚼できていたと思う。よくできたと思う部分も、そうでない部分もあった。
でも私の点数は、やっぱり23点だと思う。
大先輩には「80点くらいはつけてもいいと思うよ」と言われたけれど。
この差ってなんなんだ?
もちろん、自分と他人では感じ方が違って当然だし、好みだってあるはずだから完全に一致するなんてことはないだろう。それにしても23点と80点には開きがありすぎる。
自分では赤点で再試験だと思っているのに、『優』をつけられるようなものだ。
そこで私は2つの仮説を立てた。
まず考えたのは、自分の承認欲求を満たすために、わざと低い自己評価をつけるのではないかということ。
それなりにカワイイ女の子が「私ブスだから……」なんていうのは、その典型だと思う。もちろんその後には「えー、そんなことないよー」という言葉が返ってくるはずだ。そのラリーで一つの定型文と言ってもいいだろう。
これに限らず、相手からの評価がこれぐらいだろうと予測をし、それよりも低い自己評価を提示する。
すると魔法の言葉「そんなことないよ」がもらえる。
これはもう麻薬みたいなもので、褒められればやっぱり気持ちいいし、慣れてくれば無意識に自己評価を低めることができるので、その言葉をもらえて当たり前になってくる。そして中毒性がある上に、誰も傷つけることはない。
おそらく、私たちは大なり小なり、幼い頃からこの癖があるのではないかと思う。
しかし、今回のケースはそれとは違うような気がした。
私自身は本当に23点だと思っているのだ。50点のところを「そんなことないよ」聞きたいがために、少なめに言ったわけではない。
だとすると、もしかしたら見ている画角の問題なんじゃないか? と思った。
例えば「全力で元気を表現して!」と言われた時、ガッツポーズと全力の笑顔でバストアップの映像が撮られたとしよう。まあまあ、ちょっと表情が硬いけど元気なのは伝わるし、80点てとこかな、なんて評価がもらえるかもしれない。
しかし、私が表現したいものは違う。広い公園のずーっと向こうからダッシュして来て、カメラの前に来たと思ったらいきなり側転し、左の端から右の端へ、さらにでんぐり返ししたあとピョンっと立ち上がり、ガッツポーズをして全力の笑顔。やりたいことがこれだったとする。
だが、さっき飛んだり跳ねたりしていた部分は画角に入っていないのだ。自分の描いていた画角と、見ている人の画角に開きがあるということは、飛んだり跳ねたりした部分は撮らなくていいと思ったということ。つまりその部分に関しては、価値が見いだされなかったということになる。
だから23点なのだ。大先輩のくれた80点を23等分して、それを100倍した世界が私の表現したかった画角なのだ。
でも残念ながらそのほとんどは伝わらなかった。大先輩の思う私の100点と、私の思う100点の開きがあればあるほど、自己評価と周りからの評価に差があればあるほど、それは伝わらなかった表現が多いということになる。
「そうだなあ、今日のお前は15点くらいかな」
あの時、そう言われた方がずっとよかった。もっと表現したいものがあったのだと、それだけは伝わったのだと思いたかった。そして、お前ならもっとできるはずだ、伸び代があるはずだと、確認したかったのかもしれない。
もし、周りに自己評価が低い人がいたら、むやみに褒めず、まずはその理由をきいてみて欲しい。実は見えていないところでバランスを崩しながらも側転に挑戦したり、くじいた足を引きずってダッシュをしているかもしれない。そして、その上でさらに低い点数をつけて「側転じゃなくて、お前ならバク宙くらいできないと」なんて発破をかけてあげて欲しい。
もしかしたら、本人の想像を超える未来を作り出せるかもしれないから。
記事:永井里枝
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