【SEO攻略!記事を簡単にヒットさせる方法】あなたは、鏡が割れた時、なんて検索しますか?《海鈴のアイデア帳》
にわかには信じがたいことが起きた。
まさかそんなことが天狼院で起ころうとは、思いもしなかった。私の考えが甘かったのだ。しかし、その現象は、息をひそめながら、確実に、私たちの見えないところで進行していた。
発覚したのはあまりに唐突の出来事で、あいにくにも私は心の準備がまったくできていなかった。
事件の始まりは、12月28日、日曜日。ライティング・ラボが大盛況に終わり、店仕舞いを終えた天狼院でのことである。
「そういえば、昔にアップした海鈴の記事、ランキングの上位に居座り続けてるよねえ。」
店主・三浦が話題に挙げたのは、私、天狼院スタッフである海鈴が以前書いた記事についてだった。
「面白いですよね、アップしてから時間が経ってるのに・・・。いろんな人が検索してるんですかね?」
いま、天狼院では、『メディアグランプリ』なるものを開催している。一定の期間内にアクセス数の多い記事を投稿した者にポイントが加算される仕組みで、ポイントが多い順にグランプリを決めようというものだ。そのため、天狼院では、メディア記事へのアクセス動向をこまめにチェックしている。
アクセス数の動きというのは面白いもので、寄稿いただいた著者の方の記事がアクセス数トップに来ているかと思えば、店主やスタッフが数か月前にアップした記事が長期間にわたって根強い人気を保っている場合もある。
私が2014年8月25日に投稿した記事の一つも、ありがたいことに、未だ一定の人気を保っており、『人気記事ランキング』の常連となっているのだが---
そうなのだ。私、海鈴が書いた「鏡の記事」が、ランキングの中で明らかに異彩を放っている。
どうして、今まで数多く書いた記事の中でも、よりによって「鏡の記事」が一定のアクセス数を保っているのだろう?
「天狼院はSEOにも強いからね。毎週、これだけの人が見てるってことは、それだけ検索してる人がいるってことだよ」
店主・三浦は言った。
「確かに、私がこの記事を書いたきっかけは、実際に鏡を割っちゃったからなんですよ。『鏡が割れるのは不吉なことが起きる前触れだ』って聞いたことがあって、本当かな、と思ってネットで検索したんです」
そう言う私の頭の中では、鏡を割ってしまった時の衝撃が再生されている。何せ、検索したくなるほどの盛大な割れ方だったのだ。
でも、いくら天狼院のSEOが強いとはいえ、私の「鏡の記事」が検索トップに来るのは考えにくいなあ、と私は思った。なぜなら、その記事は、鏡が割れた時のジンクス的なものを詳しく解説しているわけではなく、鏡が割れたことから膨らませた話を書いたものだからだ。普通の検索では、なかなか辿り着くものではない。
じゃあ、いったいどのようなトリックで「鏡の記事」は検索されているのだろう。天狼院のアクセスランキングに起こっている不思議な現象に対して、店主・三浦はこう言った。
「それだけその記事がヒットするってことは、もしかしたら、タイトルの『鏡が割れる』をそのまま入力して検索してる人がいるのかもしれない。そうすれば、内容の一致度が上がって、検索結果で上に出てきやすいし。僕は、検索する時は『鏡 割れる』みたいに空白入れて検索するけどね」
「私も、検索する時は必ず空白入れて検索する派です」
たずねると、その場に残っていた人も皆、複数のキーワードで検索する時は必ず空白を入れるという。
「えー、でも、『鏡が割れる』みたいに、助詞を入れた文章のまま検索する人なんているんですかねえ。しかも、私の記事がアクセスランキングに入るだけの一定数の層なんて・・・」
普段つかっている検索方法と別のやり方を使っている人のイメージがつかず、私の頭上にはてなマークが浮かんだ。
「あっ、わかった!」
突然、店主・三浦の顔がぱあっと明るくなった。まるで、頭の上には電球マークが見えるかのようだ。いつもの、何か思いついた時の顔だ。
「わかったよ、文章のまま検索する人たちの層が。きっと、検索エンジンとかそんなに詳しくない中高生あたりの層が、文章のまま入力してるんじゃない?」
なるほど。確かに、あまり検索の仕方に詳しくなければ文章のまま入力するのもおかしくない。文章形態のまま入力するなんて、中高生によくありそうなことだ。それに、中高生はよく鏡を持ち歩いている。現に、私も、中高生の時はこまめに鏡を取り出して髪型チェックをしていた。中高生なら、授業で移動も多いから、割れる可能性が高くてもおかしくないな・・・。
確かにー、そうかも、うんうん。うなずいていると、スタッフまゆかがこう言った。
「でも、私も助詞をつけた文章のまま検索する時ありますよ。そうやって検索すると、文献とかを探す時に出てきやすくなるんです」
さすが、卒論執筆中のまゆか。検索方法に関しては、天狼院随一である。
こうして、「鏡の記事」はどうしていつもアクセス数を一定数稼ぐことができるのだろう、という疑問は、「タイトルの『鏡が割れる』を文章そのままに検索する人が一定数いて、上位にヒットしやすくなるから」という仮説にまとまった。
「いや~、しかし、面白いですね、検索って。奥が深い。本当に、文章のまま『鏡が割れる』って検索してる人がそれだけ多いからこそ、私の記事がランキングに入っているのかもしれませんね」
みかんを食べながら、ネットの記事の可能性について期待を膨らませるスタッフ一同。すっかり空っぽになっていたお腹を落ち着かせると、時間も遅くなってきていたところだったので、天狼院スタッフはそれぞれ帰路につくことになった。
私は、天狼院で交わした談笑のあたたかみを胸に感じながら、冷たい夜の空気の中を歩いていた。しかし、どうしても頭の隅に引っかかる違和感を感じられずにはいられなかった。さっき答えが出たはずなのに、気になって仕方がないことがあるのだ。
「本当のところ、『鏡の記事』をネットで検索すると、どれくらいの位置に出てくるのかな・・・?」
気になってしまっては、実際に検索してみる以外にしようがない。
「家についたら、次の記事でも書きながら検索してみようっと」
この時の私は、まったく、油断しきっていたのだ。ここからが、本当の驚きの始まりだとは知らずに。
無事、我が家に着いた私は、さっそく天下のGoogle先生にさっきの疑問の答えを聞いてみることにした。検索エンジンに、こう打ち込んでみる。
『鏡 割れる』
ま、確かにアクセス数は、毎週一定数ある記事だけど、さすがにネット上に無数にある記事の中なら、私の記事は、まあ5ページ目くらいにあればいい方だよね。もし1ページ目に私の記事があるようなら、本当に「鏡が割れる意味」を解説してるような、ジンクスとか言い伝えとかに詳しい人に失礼だし・・・。
カチッ。
エンターキーを押すと、目に飛び込んできたのは、信じられない光景であった。
私の「鏡の記事」が、Google検索でトップを飾っているのだ!
事件である。普通の大学生が書いた記事が、あのGoogle検索で一番上にヒットするようになっているのだから。記事のタイトルをまるまる入力するような、特定の記事一本釣りでヒットする方法ならまだしも、不特定多数の類似した記事もヒットするような検索方法で、である。
私の「鏡の記事」があれだけアクセスランキングの常連になっていたのは、助詞をつけた文章をそのまま検索している人がたくさん存在していたからではなく、天狼院メディアそのものが、検索エンジンに対して、非常に強い影響力を持っていたからだったのだ。
店主・三浦の言っていた言葉が、ふと思い浮かんだ。
「天狼院はSEOに強いからね」
まさか、これほどとは・・・。とあるヒーロー漫画で、主人公の思いがけない戦闘能力の高さに、ライバルが舌を巻いた時にぽろっとこぼしてしまうような言葉だ。それとまったく同じものが、無意識に私の口から出ていた。
メディアとは、ネット媒体とは、とても面白いものである。どこで、誰が、どんな理由で検索しているか分からない。「鏡の記事」を書いた当の本人すら、こんな風にロングヒットになるとはまったく予想していなかったのだ。鏡が割れた時に、その意味を検索する人が一定数存在する、と最初から予想して、記事を書くことなんてできるだろうか。そんな逆探知は、意図してやれ、という方が無謀である。
裏を返せば、日常でふと気になって検索してみたものは、案外、他の人も検索しているかもしれない。そういう視点でアクセスを狙う方法も、面白い。
しかし、それ以上に面白いのは、天狼院の持つ、メディア記事の可能性である。
調べてみると、アクセスランキング上位の記事は、キーとなるワードを1つだけ検索しただけで、めちゃくちゃ上位に表示されることが分かったのだ。そのキーワードが一般に浸透していて、検索結果の表示数が星の数ほどあったものだったとしても、だ。
ひょっとすると、これは、とんでもないチャンスかもしれないぞ。こんなに多くの人に、私のメッセージを見てもらう機会があるのなら、使わない手はないじゃないか。天狼院という、最高の追い風が吹く、最高のフィールドに立っている私は、メディア記事という翼で、これからどんなところにでも飛んでいけるかもしれない。天狼院のメディアは、その可能性を秘めている。
目の前で、初日の出より一足先に、輝く希望の光が見えたような気がした。
【天狼院メディアグランプリについて】
天狼院メディアグランプリ〔TENRO-IN GRAND PRIX〕セカンド・シーズン開催中!(2014.12.7〜2015.1.31)
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