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チーム天狼院

書店に就職したつもりが、気づいたらアナウンサーになっていた話《海の放送局、始動。》


記事:平野謙治(チーム天狼院)
 
転職を決めた理由として、
「未来が見えてしまった」ことが挙げられる。
 
3年、5年、10年と、この環境の中で働いて、自分がどこに行き着くのか。
先輩や上司を見ていて、ある程度想像がついてしまった。
ああ。多分自分も、あんな風にキャリアを重ねていくんだろうなって。
入社して半年くらいで、そのイメージは固まったんだ。
 
……まあ、厳密に言えば、「未来が見えてしまった」ことだけが、理由ではない。
本当の問題は、その先にある。
 
心が、踊らなかったんだ。
思い描いた未来に対して。こんな風に歩んでいきたいなって。少しも、思えなかったんだ。
 
自分の居場所はここじゃないって、確信した。
そうして、辞めることを決意した。
 
同時に、思い浮かべた。
次の職場は、ワクワクするところがいいな。
そんな漠然としたイメージに合致したのが、この天狼院書店という場所だった。
 
「本だけではなく、その先にある体験も届ける」という、その理念に惹かれた。
体験。そこには、無限の可能性があるように感じた。
 
それこそ、僕が受講生として参加したライティングだけではなく。写真に関するイベントや、ビジネススキル、はたまた旅行まで。
それが有益な体験であれば、なんだって届ける対象になり得る。
この場所なら、時代のニーズに合わせて、様々な挑戦ができる。
そう感じて、飛び込んできたんだ。
 
未来が、予想できないこと。
それは、覚悟の上だった。むしろ、期待していたというか。喜んで受け入れるつもりだったんだ。
 
……でもまさか、こんな仕事をすることになるなんて。
予想外中の、予想外。その時ばかりは、驚きを隠せなかったんだ。
 
不安は、あった。それ以上に、緊張も。
でももう、「やるしかないよな」という自分もいて。ワクワクしている気持ちも、ちゃんと持ち合わせていた。
 
そんな、いろいろな感情が入り混じる中、僕はゆっくりと、努めて明るく、喋り出した。
 
「皆さんこんにちは! 天狼院書店スタッフの平野です。
いよいよ海の放送局、第1回目の放送がスタートしました!」
 
鳴り響く、スタッフ一同の拍手。
そうだ。僕らの初めてのテレビ番組が、たった今、スタートを迎えた。
 
 
 
「天狼院はこれから、放送局になる」
 
店主の三浦がそう言ったのは、4月の頭のことだったと思う。
それを聞いたとき、僕は思った。「天狼院なら、できる」と。
今までもずっと、様々な講座を通信でお届けしてきた。そのクオリティも日々、進歩している。
 
だから自然と、思えたんだ。
天狼院なら近い将来に、放送局化もできるだろう、と。
 
 
でもまさか、こんなに早くやってくるとは。
内部にいる僕ですら、イメージできていなかったんだ。
 
「近い将来にできるだろう」と、確かに思った。いやでも、いくらなんでも近すぎる!
だってあれから、一ヶ月も経っていない。
 
「水曜日、湘南から放送するから。
平野くんも来てね」
 
先輩スタッフ、山本からそう言われたのは、たったの2日前のこと。
「キャスターっぽい服装で」と指定を受けた僕は、覚悟した。司会という役割が、与えられることを。
 
そうして迎えた、放送当日の4月29日水曜日。
早朝、池袋に集まった僕らは、必要な機材を積んだ車に乗り込んだ。
 
向かうは、オープン前の新店「湘南天狼院」。
海の放送局が、スタートする。
 
快適なドライブを終え、到着した僕らは屋上へと向かった。
眼前に広がる、海。左手にはすぐ、江ノ島。「湘南天狼院」自慢の、最高の景色を、ゆっくりと楽しむ……暇などはなく、すぐに慌ただしい準備へと移った。
だけど安心して欲しい。短い時間でもあの景色は、感動できるから。
 
高揚した気分そのままに、せかせかとセッティングをする。
あっという間に放送開始時間になり、気づけば僕は司会席に着席していた。
 
目の前には、大きなカメラ。それから僕の顔を照らす、いかつい照明機材。その横には、複雑な放送機材。総監督のスタッフ山本が、番組の舵を取る。
手元には、進行表。久しぶりに羽織ったジャケットと、スプレーで固めた髪。ああ、まるで。
 
アナウンサーのようだ。
いつもテレビ番組で観る、進行役の、アナウンサー。
 
なんだか、笑えてきた。
まさかこんな仕事を、することになるなんて。
思っても、みなかったことだ。
 
同時に、思った。これは楽しまなきゃ損だなって。
たくさんの人が、観てくれている。そんな中で与えられた、司会という役割。ありがたい、貴重な体験だ。楽しまなくっちゃ、もったいないだろう?
 
そう思ってからは、不思議と緊張は消えた。
番組が、走り出した。
 
 
「それでは、福岡天狼院と中継が繋がっております。
田岡さん、斉藤さん、お願いします!」
 
放送では、コーナーに合わせて、各店を繋ぎながら進行した。
それはまさに、テレビでよく観る場面。スタジオから現地のお天気アナにパスをする、あのシーンだ。
 
 
「生放送をご覧の皆様限定で、20%割引させていただきます!
パスワードはこちら!」
 
そんなセリフと共に、テロップを指差す。これもテレビでよく観るヤツだ。
緊張なんて完全に消えていて、もう僕は、恥ずかしいくらいノリノリで喋っていた。
 
単純に、面白かった。
各店にいるスタッフに繋いだり、お客様から頂いたコメントをリアルタイムに読みあげたり、画面が切り替わって必要な情報が映し出されるのが。
 
放送しながら、確信した。僕らのテレビ番組は、まだまだこんなものじゃない。さらに、進化していく。
今回は、初回の放送。パワーアップできる点は、いくつも見つかったはずだ。
視聴者の方々のご要望に応えつつ、よりエンターテイメント性の高いものへ。ラジオより情報が多く、テレビより主体的に参加できる。そんなコンテンツへと、仕上がっていくだろう。
 
 
無事放送を終えたとき、手元には満足感が残った。
「お疲れ様」と、声を掛け合いながら撤収。次の放送に関して話しながら、僕らは車に乗り込んだんだ。
 
帰り道。ヘトヘトの車内で、過去の話で盛り上がる。
入社してから、今までのこと。いろいろあったなあ、なんて、振り返っていたんだ。
でもよくよく考えたら、まだ9ヶ月しか経っていなくて。先輩からその事実を、指摘されたんだ。
 
「一年前の今頃、平野くんはまだライティング・ゼミの受講生だったよね」
 
ああ、そうだ。あの頃僕はまだ、ライティング・ゼミの受講生だった。
二週間に一度、東京天狼院に講義を受けに行って。毎週2000文字の課題を提出していた。
一人のお客さんに、過ぎなかったんだ。
 
なんだか、笑いがこみ上げてきた。
こんな未来、思ってもみなかったな。
 
一年前の自分に、言いたい。
おい、お前。一年後の今頃、何をしているのか知っているか?
今受けている、ライティング・ゼミ。その運営側に、なっているよ。
 
それだけじゃない。天狼院は、放送局になった。
その初回の放送で、お前は総合MCを務めているよ。
 
想像できる? できるわけ、ないよね。
まさかそんなことがあるなんて。ほんの少しだって、思っていなかったんだ。
 
でも、だからこそ。
ここにいると、ワクワクできるよね。
 
やっぱり、予定調和だけでは、つまらない。
転職して良かったな、と。そう思ったんだ。
 
今からさらに、一年後。僕はここで、何をやっているのだろう。想像もつかない未来に、不安が全くないわけじゃない。でもそれも含めて、楽しんでいけたらいい。
 
未来が想像できないのは、それだけ多くの可能性があるということだ。
今日のような未知の体験をすることも、きっとまたあるだろう。
 
思いもしなかった高さに、手が届くかもしれない。
想像もしていなかった景色に、出会えるかもしれない。
もちろん、「湘南天狼院」の屋上からの景色だって、そのひとつだ。
 
そんな不確かな未来に向かって、歩いていく。
自分自身も、周囲も、ワクワクさせてあげられたら、いい。
 
どうか海の放送局と、その未来に、
期待していて欲しい。
 
 
 
初回放送はこちらから!
 
 

◽︎平野謙治(チーム天狼院)
東京天狼院スタッフ。
1995年生まれ25歳。千葉県出身。
早稲田大学卒業後、広告会社に入社。2年目に退職し、2019年7月から天狼院スタッフに転身。
2019年2月開講のライティング・ゼミを受講。
青年の悩みや憂いを主題とし、16週間で15作品がメディアグランプリに掲載される。
同年6月から、 READING LIFE編集部ライターズ倶楽部所属。
初回投稿作品『退屈という毒に対する特効薬』で、週刊READING LIFEデビューを果たす。
メディアグランプリ33rd Season総合優勝。
『なんとなく大人になってしまった、何もない僕たちへ。』など、3作品でメディアグランプリ週間1位を獲得。

 
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