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チーム天狼院

輝ける場所


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:斉藤萌里(チーム天狼院)
 
 
「先生がね、もうこれ以上教えられないんだって。だから、別の先生のところに行こう」
 
幼少の頃から、私はピアノを習っていました。
ちょうど、住んでいたマンションに、ピアノの先生がいたのでその先生のもとに毎週通っていたんです。
親からすれば送り迎えの必要がない場所だったので、とても都合が良かっただろうと思います。
何人かの友達と一緒に集団でレッスンを受けていたので、友達とおしゃべりできる点でも、私はこの習い事が好きでした。
まだ小学校にも上がっていなかったので、文字を読み書きすることさえできないのに、音符や音を覚えるのは本当に楽しかったのを覚えています。
初めて鍵盤に触れたとき、先生が「ド」の音だけを親指で弾いてみるように言いました。
ド、ド、ド、ド。
たったそれだけのことのなのに、鍵盤を押すと音が響くのだということに感動して、家に帰ってからも家のピアノで何度も「ド」の音だけを叩き続けました。
初めて曲らしい曲を弾くようになるのにもそれほど時間はかからず、童謡、『バイエル』、『ブルクミュラー』の順で、よく使われる教本を一通り弾き終えたのは、小学校二年生の時でした。
自分では毎日練習をするのが当たり前だったので気づかなかったのですが、私は周りの子たちに比べて、「練習熱心」だったらしいのです。
気がつくと私は、発表会でみんなが『バイエル』の中の一曲を引いている中、一人だけ『ブルクミュラー』という一歩先の教本の曲を弾いていました。小学校二年生のピアノの発表会、先生が「この子は特別なんです」と前置きしたのを今でもよく覚えています。
 
「先生がね、もうこれ以上教えられないんだって。だから、別の先生のところに行こう」
 
母がそう言ったとき、私は「なんで?」と聞き返したくなりました。
だって、先生はピアノの先生じゃないの。
だったらどうしてこれ以上教えてくれないんだろう。
発表会も終わり、そろそろ小学校三年生が始まろうとしていた時でした。
私がいつものようにピアノの練習をしていたのを見て、母は先生に言われたことを思い出したんだと思います。
後から知ったことですが、どうやら私は教本を「進みすぎた」らしいのです。
そんなことってあるんだろうかとその時は疑問でしたが、当時習っていたピアノの先生は趣味で先生を始めたようなものだから、ある程度しか教えられないのだということを知りました。完全に大人の事情です。
「分かった」
腑に落ちないまま、私は母と新しいピアノの教室を探し始めました。
近所のピアノ教室を何軒か回って、結局かの有名な「ヤマハ教室」に通うことに。
しかし教室は隣町にあったので、毎週母に車で送り迎えをしてもらうようになりました。
 
新しいピアノの先生は30代くらいの女性で、以前は近所のおばちゃんだっただけに、一気に習い事感があるなと感じました。
先生は、名前を石倉先生といいました。
石倉先生は、「ちょっと弾いてみて」と、私に今練習している曲を弾くように指示しました。私は緊張しながらピアノの前に座り、練習していたバッハを一曲。
「ふんふん」と、何か考えているようなそぶりを見せながら、石倉先生は私のピアノの腕を値踏みしているようでした。
「ありがとう」
弾き終えると、にっこり笑って、「これからよろしくね」と言ってくれました。
すごい。今ので分かるの。
先生なんだから当たり前なのかもしれませんが、子供の私には一発で私の演奏の腕を見抜くなんて、魔法のように思えました。
 
ヤマハ音楽教室に行くようになってから、私は自分のピアノの音がみるみるうちに変化するのを感じました。
先生の指示を一つ一つ飲み込むうちに、初見で弾いた時とはまったく違う音色になるのです。以前の先生のもとでは、「とりあえず流して弾けるようになれば合格」で、一曲を突き詰めて教えてもらうようなことはなかったのです。しかし、石倉先生のもとでは、一つの曲に数ヶ月時間をかけて完成させます。教え方一つで、こんなに音が変わるなんて思っても見ませんでした。
 
家で練習していると、母からも「変わったね」と言われました。
それがとても嬉しくて、自分の音が化粧をし、生まれ変わってゆくのが楽しくて、ピアノ教室を変えて良かったと思いました。前の先生が「別の先生のところに行ってください」と言ってくれたことは、私のためを思ってのことなのだと、そこで初めて知りました。
コンクールで賞をとったことも、学校の合唱コンクールで伴奏のオーディションに受かったことも、全部ピアノのレッスン先を変えたおかげだったのです。
そのうち石倉先生がヤマハ音楽教室を辞めることになりましたが、「もしよかったら先生のところに習いにおいで」と言われたので、私も同時に教室を卒業しました。
ここからは、石倉先生の自宅でのレッスンが始まりました。しかしそうしてまでも、石倉先生からピアノを習いたかったし、自分がピアノを習うべき場所は先生のところだという確信がありました。
 
社会人になった今でも、あの時の選択は間違っていなかったと思います。
自分の「輝ける場所」は常にどこかにあって、私たちは人生の中で、その場所を見つけなければならないのだと感じるようになりました。習い事だけでなく、進学先や就職先だって同じです。自分で会社を起こそうと思う人だって、自分が一番輝くと思う場所を必死で探すべきなんです。
 
もし、人から羨ましがられるほどの超一流企業に就職したとしても、そこが自分の「輝ける場所」なのかは分かりません。「輝ける場所」とは自分の「舞台」。自分が主人公になって、花開くように舞う姿を見せられるか。そう考えると、もしかしたら出来立てほやほやの小さな会社で、自分の意思をしっかりと反映させられる場所の方が、自分には合っているかもしれないと感じることがあるかもしれません。
 
天狼院書店で働く人たちは皆どこか変わっています。
アルバイトやインターンからそのまま就職した人、もともとお客さんだった人、一度は新卒で別の会社に就職し戻ってきた人など本当に様々。
けれど皆に共通して言えるのは、ここで働く人は皆、天狼院こそ自分の舞台なのだと信じていることです。
多少辛いことがあっても、ここにいようと思えるのは、自分自身に確信があるからだと思います。私はまだ下っ端のぺーぺーなので偉そうなことは言えませんが、たぶんそういうことなんだろうと思っています。あくせく働く先輩たちが格好良く見えるのも、彼らの輝ける場所が天狼院なのだと知っているからです。
 
「輝ける場所」を探す旅に、終わりはありません。
いつだって、どこだって、「もっと踊れる」と思う場所を、探していたいと思います。
 
 

 

■著者プロフィール
斉藤萌里

天狼院書店スタッフ。
1996年生まれ24歳。福岡県出身。

京都大学文学部卒業後、一般企業に入社。2020年4月より、アルバイト時代にお世話になった天狼院書店に合流。

2019年、天狼院書店では「ライティング・ゼミ」受講後、WEB LEADING LIFEにて『京都天狼院物語〜あなたの心に効く一冊〜』を連載。

『高学歴コンプレックス』でメディアグランプリ1位を獲得。

2020年、産業出版センター主催第7回暮らしの小説大賞で『罪なき私』が一次選考通過。

2020年、第8回ネット小説大賞で『アラサーだって、翼』が一次選考通過。

現在は小説家を目指して活動、『罪なき私』販売中。


 
 
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この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2020-05-29 | Posted in チーム天狼院, チーム天狼院, 記事

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