「人生が変わる書店」だなんて、冗談だと思っていた。
記事:松下広美(チーム天狼院)
「最近、書いてないんですよ」
また、この言葉が出てきた……。
「書いていない」というのは、事実だ。
ただ、「最近」という言葉がつくということは、「書いていた」時期もあったということだ。
「書く」ことの勉強を始めたのは、2016年の12月。
天狼院書店で、ライティング・ゼミの受講を始めた。
そのときは、ライターや小説家になりたいという夢があったわけでもない。
天狼院書店のホームページに掲載されている記事が、おもしろかった。
いや、おもしろかったの一言では言い表せないくらいだ。
川代ノートをはじめ、その他の記事にもぐいぐい引き込まれていった。
特に興味を惹かれた方の記事は、ずっと前までさかのぼって読みふける。
そして、記事の最後には必ず、
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
という一文が添えられていた。
この「ライティング・ゼミ」というものを受けると、こんなにおもしろい文章が書けるようになるのだろうか。
いや、そんな簡単に書けるようになるわけないよ。
みんな元々、文章を書くのが上手なんだよ。
そんなことが頭の中を巡ったけれど、「なんとなく」文章を書くのが上手くなりたいと思った。
せっかく受講を始めたし、安くはないお金を払ったのもあって、毎週、記事の投稿を頑張った。
添削のコメントに一喜一憂する。
それは、恋人からの連絡を待っているかのようだった。
OKをもらえたときは、iPhoneを握りしめて、心の中でガッツポーズをする。時には、心の中だけでは収まらず「よっしゃ!」と叫ぶ。NGだったときは、しばらく何も手につかないこともあった。
少しずつ、締め切りに合わせて生活リズムもできていく。
仕事のある日はネタを考え、休日にスタバに行って、記事を仕上げた。
4ヶ月の受講では、なんだか足りなくて、もう1期受講をした。
「プロゼミの試験を受けてみませんか?」
2期目のライティング・ゼミを受けている途中で、川代さんからメッセージが入った。
プロゼミとは、プロフェッショナル・ゼミというのが正式名称で、ライティング・ゼミの上級クラスだ。
やりたい。
そう思う反面、憧れの文章を書く人々が集うプロゼミに私が? とも思った。
あんな素敵な文章を私が書けるわけがない。でも、書いてみたい。
やりたい。でも……。
ふたつの気持ちは、ゆらゆらと綱渡りをするように揺れた。
結局、試験だけでも、とプロゼミの試験を受けた。
なんとか合格をもらえて、プロゼミを受講することになった。
プロゼミは途中でライターズ倶楽部という名前になった。
もう、その頃には書くリズムができあがっていた。
ふと目に入ることが、書くネタになっていく。
新幹線の中で歯磨きを始めるおばあさんに出会ってしまったり、乗っている最終電車が止まってしまうような事件が起きると、花束でももらったかのように嬉しくなる。そして、その話を書かずにはいられなかった。
「異動の話があるんだけど」
そう上司から告げられたのは、2018年の終わり頃だった。
「行きます」
即答した。
自分自身、環境を変えたいと思っていて異動を願い出ていたし、新しいプロジェクトに加えてもらえるということもあった。
仕事の引き継ぎで忙しくって。
引越しの準備でバタバタしちゃって。
新しい環境に慣れるのでいっぱいいっぱいで。
そんな言葉を繰り返している間に、なんだか書けなくなっていた。
書くことから離れてしまった言い訳は、いくらでも出てくる。
言い訳を鎧に変えて、自分を守っているかのように振る舞う。
でもその鎧は何の役にも立っていなくて、ちょっとしたことで剥がれ落ちていく。
剥がれ落ちていくだけなら、また重ねればいい。
でも守っていてくれる鎧だと思っていたものは、ほんとうは自分自身を締め付けるだけの、呪いのかかった鎧だった。
これがゲームならよかった。
教会で呪いを解いてもらえばいいし、仲間に呪文を唱えてもらえばいい。
でも、そんなわけにはいかなかった。
「最近、書いてないんですよ」
そう答える度に、胸がぎゅっと締め付けられた。
最初はなぜだか、わからなかった。
呪いがかけられているだなんて、気づいていなかったから。
気づいたときには、手遅れだった。
すっかり「書く」筋力も衰えてしまって、何をネタにしていいのかもわからなかった。
ライターズ倶楽部も辞めてしまい、もう書くことはしないかも。
ま、それもいいんじゃない。
そんなふうに、思っていた。
2019年の夏。
天狼院書店の旅部に参加をしていた。
里山十帖を満喫して、2日目の朝ごはんでのことだった。
隣に座った三浦さんが、白米が美味しすぎる! と言った後、そういえば、とついでのように
「名古屋、やらない?」
と。
「いいですねー」
そう答えると、
「じゃ、決まりね」
と返ってきた。
え?
冗談じゃなくて?
ノリだよ、ノリ。
「書くこと」から完全に離れてしまっていた私の頭は、無理だと否定する。
でも頭のすみっこの方では、想像が膨らんでいく。
その想像は少しずつ大きくなって、心が動く。
動いた心は、私を動かしていた。
そして私は、今、天狼院書店のスタッフとして記事を書いている。
こうして記事を書いている間も、まだ夢なのか現実なのか、実感がわかない。
それでもたぶん、本当のことなんだろう。
「最近、書いてないんですよ」
これはやっぱり事実。
実際に書く筋力が衰えている。
全然、手が動いてくれない。
頭だってライター思考に戻らない。
それでも、「書くこと」で人生を変えられた。
その事実に変わりはない。
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