READING LIFE ver.20220208 読書特集号PROTOTYPE版

★特別無料公開中★~読書の効用~もし、あの読書体験が消されるのを防げるとすれば、あなたは幾ら払いますか?《特集①なぜ、人生に読書が必要なのか?》


 


記事:三浦崇典
   (天狼院読書クラブ/TENRO-IN BOOK CLUB グランドマスター)




 皆さんには、人生を変えた読書というものがあるでしょうか?
 僕の場合、少し振り返っただけでも、かなりの読書体験が頭の中に列挙されます。
 その最も古い記憶は、おそらく、小学校2年生か、3年生のころのことだったろうと思います。当時、NHKの大河ドラマで『独眼竜政宗』という作品が公開されていました。
 宮城県出身の僕にとって、伊達政宗は「おらほの殿様」で、最も親近感のある戦国大名でした。今は世界の名優になった渡辺謙さんがスターになるきっかけになった作品です。
 「おらほの殿様」、伊達政宗は、小学生の僕にとって、アイドルになり、スターになりました。父親に無理やり頼んで、青葉城に行き、政宗が眠っている仙台の瑞鳳殿に行き、政宗が建てた松島の瑞巌寺に行き、さらには、政宗が涙ながらに殺した弟の小次郎の墓にも行きました。

 端的に言えば、ここから歴史にハマったのですが、当時の僕は小学生です。当然ながら、山岡荘八さんの小説や司馬遼太郎さんの作品は、読むには早い。
 僕がまず、ハマったのは『マンガ日本の歴史』です。15巻ほどあるもので、マンガなので歴史が読みやすく、これを小学時代、40周はしたように思えます。その次に読んだのが、横山光輝さんが書いた『伊達政宗』でした。山岡荘八さんの原作を横山光輝さんがマンガ化したもので、これも、ヘビーローテーションして読みました。
 その後、中学生になったときに横山光輝さん繋がりで、『三国志』も読むことになりますが、これはおそらく、コーエーの歴史シミュレーション・ゲーム『三国志』にハマったのがきっかけでしょう。けれども、おそらく、小学生の自分に『伊達政宗』を読んだ経験がなければ、『三国志』を読もうとは思わなかったかもしれません。

 また、『マンガ日本の歴史』ですっかり歴史好きになってしまったおかげで、高校生以降は、歴史系の小説を大量に読むことになります。
 まずは、司馬遼太郎さんの『竜馬がゆく』『国盗り物語』『世に棲む日々』『坂の上の雲』『翔ぶが如く』などの作品にハマり、吉川英治さんの『宮本武蔵』『三国志』『親鸞』などにハマり、宮城谷昌光さんの『管仲』や『太公望』にハマりました。

 もし、この読書の系譜の原点がなかったとしたら、どうなっていただろうかと考えることがあります。

 祖父が『マンガ日本の歴史』を買ってくれなかったり、父が『伊達政宗』を買ってくれなかったりしたら、もしかして、僕の歴史好きは発動されなかったかもしれません。
 また、僕は2009年に起業しているのですが、起業前後には多くの本を読みました。
 とくに、起業前の1年間は、毎週水曜日に、学校に通うように、当時住んでいた埼玉県所沢市から、ジュンク堂書店池袋本店に通っていました。
 僕にとって、ジュンク堂書店池袋本店は、夢のテーマパークでした。あの当時、ビジネス書が展開された5階のどの棚に、どの本があるのか、熟知していて、もし見取り図を書けと言われれば、かけるレベルでした。なにせ、毎週通っていましたから。
 そこで最初に手に取った本は、「この本を読めば月に100万円儲かる!」系の本ばかりでした。当時の僕は、まさか、本に“ウソ”が書いてあるなど、思ってもみなかったのです。僕の知らないような、偉い経歴の方が書いてあることに、間違いなんてあるはずがない、と思っていました。あるいは、そう思い込みたかったのかもしれません。

 当然ながら、楽して儲かる系の本は、使えるはずがありません。それを信じて起業した僕は痛い目に遭います。最初の資金をすぐに使い果たしてしまい、働き詰めで体調も崩し、実質的に第1回目の起業は失敗しました。
 その後、アルバイトをしながら、会社は細々と続けていたのですが、そのときに出合ったのが、『1坪の奇跡』稲垣篤子著(ダイヤモンド社)でした。
 その中に登場する、稲垣篤子さんの実父伊神氏の言葉のことごとくが、当時の僕に突き刺さりました。その中でも、

「なければ、頭を使えばいい」

 との言葉が、その後の僕の人生を変えました。
 書店をやりたい、と漠然とは思っていましたが、「お金がなく、コネがないので、できるはずがない」と考えていました。60歳を超えたくらいに、貯めたお金で小さな歴史専門の古本屋をやるくらいにしか考えていませんでした。
 ところが、「なければ、頭を使えばいい」の一文が、僕の人生を加速させました。

 本屋を創ろう、と思ったのです――

 あるいは、皆さんの人生の中にも、ポイントとなる読書体験があるかもしれません。

 ここからは、半ば、サイエンス・フィクション的な話になりますが、ちょっと思考実験に付き合ってください。
 もし、あなたにとってかけがえのない読書体験が、消される装置が生み出されたとして、あなたの人生からその読書体験が消されるとしたら、どう思いますか?

 僕にとっての『マンガ日本の歴史』や『伊達政宗』であり、『1坪の奇跡』のことです。

 そして、もし、お金を払ってその体験が消されるのを阻止できるとすれば、あなたなら、いくら払うでしょうか?
 困りますよね。お金に替えられないと多くの人は思うでしょう。まさに、読書とはプライスレスな体験です。それでも、もし、お金に換算するとすれば、僕は、『マンガ日本の歴史』や『伊達政宗』、『1坪の奇跡』の読書体験は、それぞれ、軽く1千万円を超えるのではないかと思います。司馬遼太郎先生の作品に出会えない人生なんて、考えたくもありません。

 ただ、目の前にある、未読の本は“紙の物体”に過ぎないかもしれません。

 けれども、あなたが読書を“体験”することによって、“紙の物体”はかけがえのないもの、かけがえのない体験をもたらすものに、昇華されます。

 たとえば、本体価格¥1,429に過ぎない『1坪の奇跡』を読まなかったとしたら、いま全国10店舗ある天狼院書店は存在しなかったかもしれません。そして、そこで働く100名以上のスタッフも、この仕事に携わっていなかったかもしれません。何より、多くのお客様に出会えなかったかもしれません。

 本は、ただ読まれる前は、単なる商品に過ぎないかもしれません。けれども、それを昇華させるのは、皆さん次第なのだろうと思います。
 これからも、プライスレスな読書体験が人生に待ち受けていると思うと、ワクワクが止まらないのです。

 ぜひ、皆さんのプライスレスな読書体験も聞かせていただければと思います。





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